【妄想男子と恋のゆくえ。】02


 北校舎へと続く廊下を歩いていたら、急にアイツの事を思いだした俺。
’森 明人’ってやつの顔を何処かで目にした事があると思ったら、幼稚園の時一緒のクラスだった奴だ。昔から周りの子供より頭一個分出ていて、どういう訳だか周りの奴らを睨みつけていた。

デカイし睨むしで、すっごく浮きまくってたんだよな。それで、お散歩のときに手を繋いでくれる子がいなくって、仕方がないから俺が繋いでやってた。幼稚園を卒園したら、住む所が離れていたから小学校も中学校も別になったんだ。

此処へ来て同じ高校に通うとは思ってもいなかったけど、こんな中途半端な時期に転校してきたんだ、マジで何かヤバイ事をやらかしたんだろうな・・・・。
普通なら、昔一緒の保育園だったよなーって言って仲良くなるところだが、俺は今回はそっとしておこうと思った。下手に声を掛けて巻き込まれるのは嫌だし・・・。第一、あっちだって覚えてはいないだろう。ほんの3年間の事だ。

化学室で横山と俺は同じ班だったから、必然的に森も同じ班になるわけで・・・。
6人掛けのテーブルで、斜め向かいに座る森と目が合わないように、俺は出来るだけ先生の方を向くことにした。

アルミが燃えるのかどうかを確かめると言って、前に置かれた電子レンジに丸めたアルミ箔を放り込んでいる。
レンチンする時に、金属の付いた物は入れないようにと母親に言われていたから、俺は嫌な予感がしていたが、先生がタイマーを回すと案の定火花が飛び散る。

「うわ~~ッヤッベえ、燃える!」
目にした火花に興奮した生徒たちがざわついて、教室内はいっぺんに賑やかになった。が、俺の目の端に移るアイツだけは笑っていなかった。俺は確信した。やっぱりコイツはあの「アキト」だ。みんなとはちょっとずれているっていうか、何を見ても楽しそうじゃなかった。あれから10年経っても性格は変わっていなかった。

「研、後でノート見せてくれ。」
横山が俺に言う。
いつもの事だが、横山は自分でノートをとらないから、試験の前には俺のを丸写しにしていた。俺だって真面目にとる方じゃない。それでも、この時期には要点だけを箇条書きにして覚える様にしている。
「分かった。」と言うと、又前の方に顔を向けた。

「・・・ケン、っていうのか?」

突然、俺の耳に森の声が聞こえて目をやる。

「あ、そうそう、こいつは岡嶋研。・・・あれ?さっきユッキー先生が言ってただろ?!」
横山は森の顔を見ると、俺の方を指差して言ったが、森の視線は俺に注がれていて横山の話は聞いていない様だった。
昔を思い出されると面倒だ。俺はわざと森の視線を避ける様に前を向く。授業の内容をノートに書くふりをして無視した。

その後も科学の授業では実験が続き、一々歓喜の声を上げる俺たちに、先生も満足げな笑みを浮べて終了となった。
実験の材料を片付けると、俺たちは元いた教室へと戻って行く。その時、一人でダラダラ歩く俺の横に森が来た。
・・・なに?・・・
ひょっとして思い出したのかな・・・?

俺は、隣にくっつくようにして歩く森を横目で牽制しながら無視を決め込んだ。

「すっげえ、研と森くんの身長差笑える。」
「あっホントだ!20センチ以上あるぜー。でこぼこコンビだな!?」

俺たちの後ろで横山と一緒になって笑うのは、今年初めて同じクラスになった鳥居っていう筋肉バカ。部活には入らずにスポーツジムに通うのが好きだという変わり者だった。

「うっせえ!!」
これには無視を決め込むことが出来なくて、つい振り返って後ろの連中を睨む。
と、俺の隣にいた森が、突然筋肉バカの胸ぐらを掴んで威嚇した。

「あっ、チョイチョイッ・・・・」
俺と横山は慌てると、森の身体を離そうとして二人の間に割って入った。
「なんだよ!!」と大きな声で叫ぶ筋肉バカ。

「・・・・・・・・・・」
無言で胸ぐらを掴む森の姿はちょっとカッコイイ。が、ここで喧嘩なんかしたら、俺や横山も巻き込まれる事になる。そこはきちんと阻止せねば・・・・・

「やめろって!一々手を出してたらキリがない。バカは放っておけ。」
俺は、胸ぐらを掴む森の手を握ると言った。ごつくて大きくて、少しだけ熱を帯びた森の手が、なんだか変に違和感があって、昔はあんなにふにゃっとした手だったのに・・・なんて事を思い出してしまった。

「もう、鳥居は口が悪すぎ!研はこのサイズがいいんだよ!」
横山が、すかさず鳥居の肩を掴むと言った。
「おい、このサイズとか言うな。170センチあるんだからな!標準身長だろ!」
今度は横山に言ってやる。身長の話をされるのは嫌だった。俺の仲のいい奴はみんな175センチ以上あって、並ぶと俺がチビだってのが目立つから出来るだけ並んで歩くのは避けていたんだ。

「あの、、、」
不意に、俺のつむじに息が掛かって後ろを振り向くと、そこには自分の手を握り締める森が・・・。
「あ、なに?早く教室戻らないと、次の授業始まる。」
森の言葉を遮るように、俺は横山たちから離れると廊下を急いで歩いて行く。



にほんブログ村

人気ブログランキング
↑ ポチッとして頂くと嬉しいです。
ランキング参加中(*´▽`*)
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント