【妄想男子と恋のゆくえ。】03


 自分で言うのもなんだけど、俺は決して付き合いが悪い方じゃない。誘われてカラオケやゲーセンに行くのも好きだし、友達の中にいると安心出来るってのもあって、登下校も必ず誰かと一緒だった。
なのに・・・今日の帰り道は何故か森と二人きり。

ユッキーが俺に言ったんだ。森は帰国子女で、小学校からずっとドイツに居たらしい。それで、今朝は母親が車で送ってきたが帰り道が分からないと。
何でも森の住むマンションは俺ん家の近くだったらしい。だから一緒に帰れと言われた。

「ありがとう、助かる。」
初めてちゃんとした言葉を森の口から聞いた気がする。学校では「あ、」とか「あの・・」とか。
そう言えば、俺の名前が研だって言うのを聞き返されたっけ・・・。

「別に、家が近くなら遠回りするわけじゃないし、いいんだけど。・・・できれば少し離れて歩いてくれない?」
バス停に続く舗道を並んで歩くと、俺の隣で圧を掛けてくる森に言った。マジで威圧感ハンパないし、通り過ぎる人の目線が確実に森を見ているのが分かって、俺は隣で居たたまれない気持ちになっていた。

「・・・・ごめん。」

「別に謝んなくてもいいんだけど・・・・。森ってつい最近までドイツで暮らしてたんだ?!じゃあ日本に居たのは何歳まで?」
なんとなく無言で歩くのも変な感じだし、特に興味はなかったけれど聞いてみた。

「小学校の2年生の秋から向こうに行ってて、先週帰って来たところ。マンションは母の弟が管理していたから・・・。」
「へえ、じゃあドイツ語話せるんだ?スゲエな、かっけーじゃん。」

あんなにこの男には関わらないようにしようと思っていたのに、何故かペラペラとしゃべってしまって、気が付けば森のマンションの近くまで来てしまっていた。
バスの中ではシートに座ったのが俺だけで会話をすることもなかったが、こうして歩けば俺が言った通り2~3歩下がって歩く森がしゃべり続ける。

「あ、・・・ここだから。」
「うん、じゃあな。」
そう言って、森とマンションの植え込みの辺りで別れたが、「あ、あの!良かったら家に来る?」と森に聞かれて一瞬考え込んだ。

あんまり親しくなると、昔の事を思い出すかもしれないと思い、内心ではモヤっとするが、目つきの悪い森の顔がぱあっと華やいだ気がして断われなかった。

「まあ、いいけど・・・」

その言葉で、森はマンションのエントランスの扉を開けて俺を迎え入れてくれた。
エレベーター前で上を見ながら到着を待つが、その間も俺に注ぐ森の視線が熱くて、息を飲むと視線を別の部分に移す。





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