【妄想男子と恋のゆくえ。】04


 通されたマンションのリビングで、大きなソファーには座らず絨毯の床の上に胡坐をかいて座った俺は、ガラスのテーブルに肘をつくと上目使いに辺りを見廻す。あまりキョロキョロと顔を動かすのも恥ずかしくて、ゆっくり右回りに部屋の中を確かめた。
12帖くらいの広さがあるのに、置かれている家具はほんの僅かで、俺んちのようにテレビ台の上にごちゃごちゃと物は置かれていない。50インチぐらいある大きなテレビとこのガラスのテーブル、それから森の身体に合わせたみたいにデカいソファーがあるだけ。
壁は白く、写真や飾り物など一切ない殺風景なリビングで、テーブルに肘をつく俺の目の前に、コップに入れられたジュースがトンツと置かれた。

「あ、ありがと。」
「・・・・・」

部屋に入ると急に無口になった森。
学校でもそうだったから、これがコイツの普段の姿なんだろうな、と思うが・・・・・。人を誘っておいて無口とか、俺はどうすりゃいいんだよ。特に話したい事も聞きたい事も無いんだけど・・・・・。

ジュースをゴクゴクと飲み干して、一息ついたので帰ろうかと思った時だった。
「ケン、ちゃん・・・・だよね?!」
恐るおそる俺の顔を覗き見る様に近寄って来ると、そう聞かれて「え?」と聞き返す。ちゃん付けで言われるなんて、小学校低学年の時ぐらいだろう。なんだか背中がむず痒い。

「・・・ちゃん、ってのは止めろ。俺の名前聞いてどうすんの?」
はぐらかす様に知らん顔で聞いてみた。森の頭の中にも、幼稚園の頃の姿が浮かんできたんだろうか。俺の事を思いだした?

「・・・・や、いい。別に何でもない。」
「は?・・・ま、いいけど。俺そしたら帰るな!ジュースご馳走さん。」
その場で立ち上がると、カバンを掴んで肩にかけ軽く手を上げて森にバイバイと言う。

「うん、送ってくれてありがと。」
それだけを言って、俺の後に付いて玄関まで来ると、靴を履き終る迄じっと見ている。つま先を軽くトントンと鳴らしてドアの縦長の取っ手に手を掛けると外へ出た。
中で見つめる森と一瞬だけ目が合うと、なんだか照れくさくなって下を向いたままドアを閉める。

- なんだったんだろ。家に上がって何をしゃべる訳でも無く、ジュースだけ飲んで帰って来るとか・・・。
一体何をしに行ったんだか・・・・・。

一瞬思い出したのかと思って焦ったけど、俺から切り出す必要もないよな。覚えていなかったらマジでカッコ悪いし・・・。



遊具の真新しい公園が見えてくると、中で遊ぶ幼児や小学生たちの姿が目に入った。最近では砂場が無くなってジャングルジムやブランコまでもが撤去されるようになった。その代わり木でつくられた遊具が目立つが、スリルも何もなくて、平坦な板の上をただ歩くだけで、所どころに縄で編んだロープがつけられているが、あれにぶら下がってもすぐに足が着くほどの高さだ。
鉄のジャングルジムの天辺を競って登った頃が懐かしい。頭を思い切り鉄の棒にぶつけてはたんこぶを作っていたが、ああいう経験が痛さや危険を教えてくれるってのに・・・。

あ~あ、ベンチに座ってゲームしてらあ・・・・・。
横目で子供たちを見ながら歩くと、すぐに家の前に着いた。今日はまだ早いから、オフクロはパートから帰っていないと思う。
カバンから家のカギを取り出すと、鍵穴に差し込んで中へと入る。一軒家の狭い廊下を奥まで進むと、10帖の台所謙食堂があって、テーブルの端には今朝のチラシが積んで置かれ、よく見ると所どころに赤いマジックで丸印が書かれていた。

それを片付ける訳でもなく、俺は椅子に腰掛けるとさっきの森の家を思い出した。
最近日本に帰って来たって事は、まだ荷物とか届いていなかったりするんだろうか。あまりにも殺風景すぎて、キレイなんだけど逆に落ち着かない。
- アイツって兄弟いたっけ・・・?
そう思っていたら、玄関のドアがドンツと鳴って靴を脱ぎ捨てる音が聞こえた。
暫くすると、床を鳴らしながら廊下を歩く音がして、それがまじかに迫った頃漸く扉は開かれた。




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コメント

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Re: 楽しみです!

> わ~い、妄想男子君のお話!やっと時間に余裕が出来たので読みに来させてもらいました~!(*´д`*

お越しいただいて有難うございます!

> 森君が思ってたよりも不愛想君で性格や言動がまだどんな子かハッキリ出てこなくてとても興味が募ります!
> 家にケン君を誘えてよぉっし!進展か!?と思いきや、ああ~!おしい~、進まなかった~!いやでもでも水面下で2人の間で何かが進んでるような…??

じわじわと何かが始まっておりますよ~(*''ω''*)

> この二人の進展これからも楽しみにしていますね~!(´∇`)

はい、有難うございます。一緒に楽しんでくださると嬉しいです!

楽しみです!

わ~い、妄想男子君のお話!やっと時間に余裕が出来たので読みに来させてもらいました~!(*´д`*
森君が思ってたよりも不愛想君で性格や言動がまだどんな子かハッキリ出てこなくてとても興味が募ります!
家にケン君を誘えてよぉっし!進展か!?と思いきや、ああ~!おしい~、進まなかった~!いやでもでも水面下で2人の間で何かが進んでるような…??こういう読み手に気を持たせるところ、イッチさんは上手ですねえ。モダモダわくわくしちゃいますよ!(*´д`*)
この二人の進展がこれからも楽しみにしていますね~!(´∇`)