【妄想男子と恋のゆくえ。】05


 「研!!さっき長身のイケメンと歩いてたって?!」

ドアを大きく開けて入って来るなり、俺を’研’と呼び捨てにするのは妹の晴香。
2歳下の中学3年生で、コイツは小さな頃から俺の事を「お兄ちゃん」なんて可愛く呼んだためしがない。ずっと呼び捨てだった。

「うるせぇなー、何処で聞いてきた?お前の友達、暇人か?!」
「ねえ、誰よー。研の友達にイケメンなんていなかったじゃん!うちに来たことがあるのは、背は高いけど顔がアリクイに似ている横山とぉー、鼻が大きな竹下とぉー、それから・・」
「人のダチの顔を酷評するな!しかもお前にしたら先輩、年上を呼び捨てにするんじゃねぇぞ。」

「ちッ、」
舌打ちをすると、カバンを椅子に置いて晴香は冷蔵庫に手を伸ばす。ガチャっと乱暴に扉を開けて牛乳パックを取り出すと、それに直接口を付けようとするから俺は慌てて立ち上がり牛乳パックをひったくった。
「コップに入れろって!!汚ねーなぁーもぉーーー」

「ウザッ。」っと言って食器棚からコップを出すと、俺の持つ牛乳パックを取り上げて注ぎだす。
全く・・・誰に似たんだか・・・・・。

「それで?!誰なのよ、イケメンは!」
ゴクリと喉を鳴らしたかと思ったら、又晴香の質問が始まった。イケメンと言う文字に弱いのか、こいつらは常にギャーギャー騒いでは自分を見失っている。

「今日転校してきた奴で、前に幼稚園で一緒だった・・・・」
と、そこまで言って言葉を切った。

晴香は覚えていないだろうな。晴香が同じ幼稚園に通ったのは1年だけだもんな。それに3歳ぐらいじゃ記憶にも残らないだろう。
俺は立ち上がると、二階の自分の部屋に行くためカバンを持ち上げた。
「研、その子と仲良くなってね!そしたらうちにも遊びにくるでしょ?連れて来てよね?!」
俺の背中に尚もまくし立てている晴香を自分の妹ながら不憫に思った。他になにかやる事はないのかよ・・・。

「お前の口の悪さが無くなったら連れて来てやるよ。女の子らしくしておけ!」
チラリと振り返って言うと晴香の顔を見たが、俺の方を向くと口を尖らせていた。
「自分だって、・・・口が悪いくせに!友達言ってるよ、晴香の兄ちゃんは喋んなきゃ可愛いのにって!」
思わず俺の眉は八の字になって、それから深いしわが寄ると身体ごと晴香に向き直った。

「年上を可愛いとかいうな!キモイってーの!!・・・ったく!」
カバンを肩に引っ掛けると目の前の晴香に言ってやったが、同じ目線で睨まれて少しだけ腰が引ける俺。

「チビのくせに・・・・」と小声で言ったが、俺にははっきりと聞き取れたから「おい!なんつった?!」と声を荒げてみせた。
俺の妹は、どういう訳だか背が高い。170センチの身長に、ロングヘアで足も長くて・・・。
俺と同じ身長で近寄られると、ちょっと自信が無くなる。兄としての尊厳とかいろいろ失くしそうで怖くなるから、俺は敢えて取り合わないでいようと思うのに・・・・。

「あたし、昨日測ったら171センチあったんだよねー、身長。モデルのスカウトとか来たらどうしようかなー」
軽く首を傾げると、眉をあげて俺の事を小馬鹿にしたように見る。モデルは身長だけじゃなれないって―の!!と言ってやりたいが、返って来る言葉を想像していうのを止めた。

「そういうのは来てから考えるんだな。じゃ、俺部屋に居るから、オフクロ帰って来て飯出来たら呼んで。」
それだけを告げて二階の自分の部屋に上がって行った。

- - 
その晩、夕ご飯を食べながら思い出したかのようにオフクロが口を開いた。
「そういえば、今日昼休みに休憩室のファッション雑誌を見てたんだけどさぁ、あの人、えっと、研が通ってた幼稚園で一緒だった・・・、ちょっと大きな男の子いたじゃない?森くんだっけ、あのお母さんがモデルさんで載ってたのよ!!ビックリしたわ~あたし。」
箸を持つ手で人を指差す様にするから、俺が眉を寄せて睨むと、オフクロも気づいて茶碗に戻した。

「それだッ!!今日、レナが研と長身のイケメンを見かけたって言ってて、バス通りを歩いていたらしいよ。お母さんがモデルだなんて、羨ましい~」
早速晴香が森の事を嗅ぎつけて、俺もやっぱりそうかと確信したが、まだ本人に聞く気にはなれずにいた。

「オフクロよく分かったな。もう10年以上も前に見た人の事を覚えてるもの?」
俺が空いたコップにお茶を注ぎながら聞くと、ふくよかな頬を更に丸くして笑った。
「あんたねぇ、昔もあのお母さんは超キレイで、うちのお父さんなんか幼稚園の運動会で隣に座ったって喜んでさぁ、そりゃあ覚えてるわよ。スラーッとして普通の奥さんって感じじゃなかったもん。その時はまだモデルやっていなかったんだねぇ、うんうん。」
なんだか自分の身内の事のように鼻を高くして喋るオフクロに笑えたが、それでもやっぱり覚えているのは俺だけじゃなかったんだと思った。

「今度、研がその息子を連れて来るってよ!お母さんも一緒に来たらいいのにねえ、昔話とか出来るじゃん。あたしも見たいし。」
晴香はオフクロに言うと、今度は俺の方を見てニヤッと口角を上げる。母親を味方に付けて、どうしたって森の事を此処へ呼びたいらしい。ホントに女って・・・・・






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コメント

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拍手コメントお礼です

たかみんさん、拍手コメント有難うございます
妹ちゃんのインパクトが強くって、兄ちゃんの研はたじろいでおりまする。笑
会話が楽しいと言ってもらえて嬉しいです。
十代のちょっと口の悪い部分もありますが、等身で進んでまいります。
研と森くんの会話、今の所8:2でほぼ研がしゃべっておりますが、
いずれ森くんにも会話を楽しんでもらおうかと思っております。
続きをお待ちください( *´艸`)