【妄想男子と恋のゆくえ。】22


 -------あ、傘忘れた------

今朝は雲行きが怪しくて、オフクロが弁当を渡してくれる時に傘を持って行くようにと言われた。
なのに焦って玄関を飛び出した俺は、森のマンションの前まで来るとそれを思い出す。ポツリと頬に当たった雨粒が思いのほか強く感じて、小雨というよりは本降りになりそうな勢いだった。

「ヤッベえ~、バス停までもうちょっとだってのに・・・」

此処で森が出て来たらドラマの様だと思いながら、俺はマンションの屋根のある所まで進むと雨宿りをする。バス停まで走って行っても雨宿りをする屋根が無いし、ここで時間ギリギリまで待って走って行く方がいいだろうと思った。
学校前のバス停で降りれば、誰かの傘に入れて貰える。5分ぐらい此処にいよう・・・。

スマフォに目をやって時計を確認。空を仰ぎ見て雨が酷くなりそうか確認。
隙間なくグレーの雲で覆われた空を見て、こりゃあ一日雨だな、と思ったら傘を忘れた事を再度後悔する。

いつも俺より先に教室に来ている森は、一本早いバスに乗っているんだろう。ここに居ても森が来る事は無いと思っていた。
なのに-----

「あ、・・・・おはよ。」
と、背後で森の声が聞こえて「はッッ」とビックリする俺。

「.........まだ居たの?!」
目を剥きながら森に聞くと「うん、目覚ましかけるの忘れちゃって・・・。」という。

「オフクロさんは?」
「昨日の晩に発ったから、これから暫くは自分で起きなきゃならない。二度寝なんかしたら完全に遅刻だね。」

「ああ、そっか・・・。それで昨日うちに届けてくれたって訳?!」
「そう。」

森は言葉を端折って伝えるから分かりづらいんだ。昨日の時点で、オフクロさんがドイツに発ったからプレゼントを渡しに来たって言ってくれればいいのに................。
いきなり物を渡されても、なんでくれるのか分かんねぇじゃん。日本語、難しいのかな?!

そんな事を話しているうちに時間が来て、俺は森の傘に入れてもらうとバス停まで歩いて行った。

雨のせいでバスも少し遅れて来て、丁度いい具合に乗り込んだ俺たちは学校までの道をバスに揺られて行く。
俺は、外の景色を見ながら昨日オフクロが言った言葉を森に伝えた。

「うちのオフクロが、自分の休みの日はお前を晩飯に呼べって言ってた。昨日美味そうなもの貰って喜んでたよ。」
敢えて、手紙が入っていたことは言わなかったが、森は俺の言葉にちょっとだけ照れ笑いをすると「ありがと。」と言った。

学校に着いて教室に入ると、横山の隣にいた鳥居が俺の肩を掴んで森から引き離す様に連れて行く。
「な、なんだヨ・・・?!」
カバンも置けないまま鳥居に引っ張られて、後ろの壁に押し付けられた俺が睨むと、鳥居は「メールが来た。明日、カラオケ行くから研を連れて来てって言われた。」と満面の笑みを浮べる。

「ぁ、・・・・ああ、アレ、な?!合コンか。」
「そう!!立花の一年、来るってよ!」
「・・・・、ああ、そうか。分かった・・・。」
鳥居から逃れると、俺たちをじっと見ている森に気付いて、また手を出すんじゃないかとハラハラした。が、俺が離れたから森も自分の席に座ると鞄を仕舞った。

ホームルームの後で、横山が森にも明日来ないかと誘うのが聞こえて、俺は少しだけ斜め後ろに目をやると横山の顔を見る。
- コイツ、本気で誘ってんのか?
森は確かにイケメンだし、晴香がキャーキャー言う程だけど、俺が思うに、合コンとか慣れていないような気がした。晴香とは、かみ合わない会話で俺も吹きそうになったし、明日、女の子たちの中でどんな態度をとるのかと想像したら、それはそれで面白い様な気もしてくる..........。

もしも、気に入る女の子が居たとしたら、俺に言った事は帳消しになるんじゃないか?
そんな事が頭をよぎって、それならと、後ろを振り返り「森も一緒に行こうぜ。」と誘う。

「.............」
一瞬、片方の眉を上げて変な顔をした森だったが、俺が「な?行こうよ、帰りは俺と一緒に帰ればいいし・・・」と言うと、「分かった。」と頷いた。

「じゃあ、早速鳥居に話してこようっと!」
横山は嬉しそうに首を揺らしながら、入口の近くに座る鳥居に近付くと、俺たちの事を話したようで、鳥居はこちらに顔を向けるとニヤッと笑う。

これで、『付き合うって言った。』なんて言われずに済むかもしれない。
そう思ったら心が軽くなって、早く明日になればいいのに、と待ち遠しくなった。
森だって、健全な男子に戻る事が出来たら、その方が楽しいに決まっている。なにも、男の俺に執着する事は無い。

その日、相変わらず背中に刺さる森の視線を感じながらも、俺はもうしばらくの辛抱だと言い聞かせて気にしないように努めた。



にほんブログ村

人気ブログランキング







スポンサーサイト

コメント

非公開コメント