境界線の果てには。(043)

  3年前の俺には、今みたいな状況を想像する事なんて出来なかった。週末には、若い娘の集まる店へと足を運んで、自分の性を確認する事に躍起になっていたんだ。

別に女の子が大好きって訳じゃないけど、それなりに遊んできたから、身体が疼くと発散したかった。なのに、やっぱり女の子とは二人きりになれない。すぐに目眩や吐き気に襲われた。

この際、女っぽい男でもいいや。なんて開き直ったら、とんでもない事になって…。

その時助けてくれたのが、末永先生だった。

「青木さん」
また、ハスキーボイスのカレに呼ばれる。

診察室のドアの前で、俺を見つめるカレと目が合った。

その時、俺の記憶の片隅にある何かが、ピン。と弾かれたような気がした。

ハスキーボイス............ハスキーボイ...........ス

末永先生に「広斗?」と呼ばれ、意識が戻る。

「あ、すいません。」
丸椅子に腰掛けると、末永先生の方を向いた。

「細かい結果は来週までに出るけど、大丈夫そうだよ。…後は、気持ちの問題かな?」

「……」
そう言われて、もう3年。

「気持ちを思いどおりにするのって、どうしたらいいの?」バカな質問をした。

「……そうだねぇ…」
本気で悩んでいる先生に

「はは、ウソだって、先生。そんなの出来てたらこんな病気になってない。」

"病気"と、自分で言ってしまい、そこに落ち込む。
病気なんかじゃない。そう思いたい自分がいた。

「これは、治療になるかどうか…。今度、暇な日を教えてくれるかな?」

「え?…俺の?」
「うん、そう。良かったらデートしよう。」

「はぃ~??」
何を突然……
広斗が固まっていると、末永がニコニコして
「ここにメールして。ね?!」

そう言われて、アドレスを書いたメモを渡される。

「じゃ、今日はこれでおしまい。…次の患者さん呼んで。」
末永が、後ろのハスキーなカレに言った。




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