境界線の果てには。(044)

足元の石ころを蹴りながら、広斗は学校までの道を歩いていた。

アスファルトの上を音をたてて転がって行く石を見ながら、あのハスキーボイスの看護師の顔を思い浮かべているが、なぜだかモヤモヤする。

-まだ2回しか出会ってないのに、あの声をどこかで聞いた気がするんだよなぁ

コロン、と石を蹴ると、広斗の横から人影が。見ると、高木が石を追いかけて広斗を追い越した。

「おーぃ、」
声をかけると、石ころを蹴りながら手を上げた高木。

-横取りしやがって。

広斗は小走りして追いかける。
「てめぇ、俺の石を……」

「名前なんか書いて無いもんね!」
そう言うと石ころを取り合い、大の大人が走っている。
取られそうになると、背中を押しては邪魔をするが、通学途中の生徒たちに笑われ、ハッと気付いて止めた。

「バッカじゃねぇの?」 
はあ、はあ、と息をあげて高木に言ったが、お前もな。と言われて可笑しくなった。


二人で並ぶと、
「昨日さ、面接行ってきたんだ。」
少し嬉しそうに高木が言う。

「へぇ、で、どうだった?」
「ベンチャー企業なんだけど、初任給が結構良くてさ、いいかなって。」

「ブラック企業とか、気をつけろよ?!」
高木のニヤけ顔を見ると、つい余計なことを言ってしまう心の狭い俺。

「まあな、そこらは入ってみないと。」
「後一年あるし、自分に合うとこ見つけられるって。」
隣の高木に言えば、ああ。と頷く。

教室まで話しながら歩いて行くと、入り口の所で真咲が女の子といるのが見えた。

広斗たちに気づいて、顔を向けると近づいて来るが、一緒に女の子も来るので嫌な予感がする。

確実に、俺の顔を見て微笑みを浮かべている彼女。
前に一度、誘われた事があったけれど断った娘だ。
どうして真咲と?

「おはよ。」
「おう、・・じゃあ俺は」
そう言って高木が先に教室へと入って行った。

高木の後ろ姿を見送って、真咲が俺に耳打ちをする。
「マイッタ。」と。

何の事か分からないが、女の子はにこやかに微笑んでいる。
「おはよう。私の事覚えてますか?」
「・・・・・ウン。一応。」
ぎこちない笑顔を向けて言えば

「今度の土曜日、中野クンたちと一緒に飲みに行かない?」

「え?・・・たち・・・って」
隣の真咲を見ると、

「林 真希ちゃん、彼女が4人でってさ。・・・結構しつこくて。」
頭の中で、真希の顔を思い出す。
-ああ、真咲の元カノ

「へ、ぇ・・・いいよ。俺は」
つい口をついて出た。
隣の真咲は変な顔をしたが、彼女の頬は急に華やいだ。

「じゃあ、時間決まったら連絡するね?」
そう言って自分の友達が座って待つ場所へと向かう。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
俺と真咲は、横並びのまま二人で目を合わせたが、何も言わず席を探すと腰を降ろした。




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