境界線の果てには。(050)

 振り返った広斗の目に映ったのは、アースカラーのジャケットに黒のショートパンツ姿の晴香。
隣には真咲の元カノ、真希が白のニットワンピースに膝までのブーツを履いていた。
真咲の趣味ってこういう娘だったのかと、改めて思う。

「後でカラオケも予約しちゃったから。先にご飯ネ」
明るく言う真希ちゃんの横で、真咲は困り顔だ。
こういう時、女の子は結構押しが強くて、男はそれに従う感じなのが笑える。
いつも、真咲が俺を引っ張って行くから、俺的には変わりないんだけど、真咲は完全に指揮を取られて不満げな様子。

俺と晴香ちゃん、真咲と真希ちゃんの並びで歩いて行くと、5分くらいの所に店はあった。
雑居ビルの3階で、居酒屋風だけどフランス料理みたいなメニューがあるらしい。
料理には興味があるけど、その前に立ちはだかるエレベーターの方が、今の俺には重要だった。

「階段で行く?」
真咲が彼女たちに聞くが、「え?」っという顔をされた。
当たり前、普通は3階以上の場所に行くのにはエレベーターを使う。エレベーターが無ければ仕方ないが、健康オタクでもない限り進んで階段は使わない。

「いいじゃん、エレベーター乗ろうよ。」
広斗が言うので真咲の方が驚く。

ボタンを押して乗り込むと、やはり狭い。
見れば9人までとなっていて、「4人でも狭いんじゃない?」と真咲が言った。

俺の拳はギュっと握ったまま。二人きりではないから、多分大丈夫。それでも緊張して、爪が手の平に食い込んでいる。
真咲が俺の目の前に立ち、体重をかけるようにふざけてくるが、俺の気を逸らそうとしてくれてるのが分かって嬉しい。

「重い!」と、わざとらしく真咲のジャケットを掴むと、そのままにしていた。俺ってヘタレか?

「ついたよ~。」
軽い真希の声に、店の中へと入っていく。

--いらっしゃいませ~

明るい出迎えは居酒屋風。でも、中はカウンター席のほかに個室もあるみたいで、奥の方が和紙の引き戸で仕切られていた。

広斗たちは奥の部屋に案内される。またもや個室。
真咲がわざと引き戸を開けておくと、真希がうるさいからと閉める。

二人きりじゃないのに・・・と広斗は真咲の心配症に呆れるが、やっぱりちょっと嬉しい。



 1時間程で、 最後にニンニクバターの風味のきいたエスカルゴを堪能した4人は、店を後にした。
食事中の会話は、学校での出来事や、晴香の出身地の沖縄の話で盛り上がる。店を出た後も、沖縄県人のあるあるネタを晴香がしてくれて、広斗も機嫌よくなった。

-こんな自然で明るい娘となら付き合えるかも。
頭をよぎる広斗の感情に、敏感に反応したのは真咲だった。

広斗が女の子といても普通にしていられるのは嬉しい。
でも、その先は・・・と思うと、なんとも言い難い感情が、真咲の中に黒く渦巻いてしまう。



次のカラオケ店へ行くと、一番奥の部屋が当てられていた。
「トイレって・・・・」
「ん?行きたいの?入口の所を左に入ったトコだよ?」
真咲の質問に答えた真希。

—オレがトイレに行ってる間、広斗は・・・・・・・・・
女の子、二人だけど・・・・・・・広斗と二人きりではないけど・・・・・・・

真咲の頭の中が、ぐるぐるしだした。







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