境界線の果てには。(051)


 久しぶりに歌を歌って、結構盛り上がったが、真咲の様子が変だ。
さっきから拳を握り、躰に力が入っている。
「おい、大丈夫か?」
問いかけるが、首をうんうん、と振るだけで、目が泳いでいる。

トウルルルル・・

終了時間の10分前を知らせる電話が鳴った。

「はい、・・・延長、どうする?」
電話を取った真希の問いかけに、

「終わり、終わり!」
真咲が大きな声で言うので、真希も晴香も肩をすくめた。
まだ時間は早いので、あと30分くらい延長するかと思っていたようだ。

そこから10分、時計の針とにらめっこ状態だった真咲が立ち上がると
「さ、じゃあ帰るか?!早く、忘れモノない様にな。」
一番に伝票を持つと、部屋を後にする。


「おい、焦んなくても・・・」

広斗の言葉は聞こえていないみたいで、入口のカウンターを目指すと、ズンズン歩いて行く。

会計は真咲がみんなの分を払うと言って、さっさと済ませた。
それから、やっとみんなの方に向き合うと、
「ちょっと、トイレ行ってくるから、ここで待ってて。」
そう告げると、猛ダッシュで走って行く。



あっけにとられる3人。

-アイツ、もしかしてずっと我慢してた?

そう思うと広斗は可笑しくなった。
プツ、と吹き出してしまう。

「なにアレ。子供?」
真希が呆れて言ったが、広斗にはなんとなく真咲の考えてた事が分かり、ちょっとくすぐったい。

-俺の心配したんかな?・・・バカだな。漏らしたらどうすんだ?
密室で彼女たちといさせない為に、途中で席を立てなかった真咲の事を思うと可哀そうな気もする。
・・・ダメだよな、いつまでも心配されてちゃ。



しばらく待つと、向こうからスッキリ顔の真咲が戻ってくる。

「ごめん、ごめん。我慢しすぎてなかなか出にくくてさぁ。」
しれっと言うので、
「も、おぅ~~、やぁだぁ~~~」
二人の女子に叫ばれて
「だって、ホントなんだよ。・・・なぁ広斗?我慢すると出るまでに時間かかるよな?」
「俺に聞くなって!!」
わいわいと賑やかに話しながら、店を出た。


なんとなく、この後どうするのか雰囲気で感じるが、
「駅まで送るよ。」
真咲の発言で、解散を強いられた真希が
「ぇえ?青木くんも帰っちゃうの?晴香はまだ大丈夫でしょ?」

こくん、と頷くが、
「ごめん、明日オレたち朝から用事があるんだ。6時起きだからさ。」
真咲が真希に向かって両手を合わせるように言った。

「・・・じゃあ、仕方ないか・・・」
そういうと晴香の隣に寄り添って歩く。


4人で駅まで歩き、真希たちを見送った二人。

「さ、オレたちは飲みなおすか?」
踵を返すと真咲が言った。
「嘘つき。用事なんかないくせに。」
「オレはあるよ?広斗と一緒に寝ていたいから」
「・・・・・・・・・・」

バスツツ、、言葉の代わりに、真咲の尻に蹴りをいれた広斗だった。
と、その時
「青木くん?」
聞いた事のあるハスキーな声が、広斗の背後から聞こえてきた。

「え?」
振り返った広斗が目にしたのは、ロングヘアで化粧をばっちりした女性。いや、男性だった。









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