境界線の果てには。(052)




まるで足かせをはめられた様に、その場から動けない広斗の横で、真咲は目の前の人物を凝視している。

「…チョット、やだ〜、怖いわーお友達。」
彼女、いや、カレが自分の体を庇う様に胸を隠してて言うので、真咲の眉間に深いシワがよる。

「…ぇ、まさか………?」
広斗が自分の記憶をさかのぼると、この間からのモヤモヤが、少しだけクリアになった。

「あなた、末永クリニックの…看護師?」

その言葉に一番驚いたのは、真咲だった。
驚き過ぎて、声が出ない。口だけポカーンとあけていた。
-広斗のあとを着けて行った、あの病院の看護師が、オカマ?


「やっと気付いてくれて、うれしい!」

そう言うと広斗に抱きつくが、
「ちょっと、止めろって……!」
慌てて真咲に引き剥がされて、よろけてしまった。

「何よアンタ。」
真咲に向かって怒るので、広斗が焦る。

「チョット、ちょっと落ち着きましょう。…アレですよね、三年前の、あの人ですよね?!」

「ふっ、そうですぅ。貴哉(タカヤ)でしたぁ。思いだした?青木くんの初めてのオ・ト・コ。」
その言葉を聞いて、走馬灯の様な光景がグルグル回りだし、おもわず目眩をおこした広斗は、その場にしゃがみ込んでしまった。

真咲が手を伸ばすが、地面にへたり込んでしまった広斗の顔が、一気に白くなっている。
真咲もしゃがむと、広斗の顔を心配そうに覗き込み、背中に手を置いてさすりながら
「ヤバイよこれ・・・この前の時みたいだ。」
貴哉の方を向いて言った。

賑わう雑踏の中で、通り過ぎる人がジロジロ見るので、貴哉はめんどくさそうに口を開くと
「ボクの部屋がすぐそこだから、上がって休んでいきなよ。」
言うが早いか、広斗の腰に手をかけると、ベルトごとグイツと持ち上げて立たせ、そのまま自分の背中に背負った。
「あ・・・」
一瞬の早業に、真咲も言葉が出ないで立ち上がる。

「なにボサっとしてんのよ?これくらい平気よ。看護師のチカラ、なめんなよ?!」
そう言って、広斗を背負ったまま、どんどん前を歩いて行った。


-カッケ~~エ
遠目で見たら、絶対変な絵面なんだろうけど、あのオカマ、カッコイイな・・・

心の中で思いながら、二人の後ろをついて行く真咲だった。


 目の前に見えるのは、地上10階はあるだろうマンション。
オートロックらしく、貴哉に番号を言われて押していくと、自動で扉が開いた。

-ぉぉおおおお、カッケ~
またもや真咲は感激する。

そしてエレベーターに乗り込むと、最上階で降りたが、ドアが開いたそこは玄関のようで、外の見える通路ではなかった。

「こ、ここってワンフロアが、一軒の家?もう家の中じゃん・・・・」真咲は、ぐるりと周りを見渡すと、独り言のように言って驚く。

貴哉が先導してリビングに向かうと、大きなソファーの上に広斗の体を横たわらせた。
ふぅ、と息を吐いて横に座り、広斗の額や頬に手を当てる。

「ちょっと、そこのクッション2個持ってきて。」
向かいのソファーに乗っているクッションを真咲に持ってこさせると、広斗の膝の下にそれを押し込んで、下肢を上げさせた。
それから、置いてあったブランケットを広斗の体にそうっとかけてやる。

一連の動作を見ていた真咲だが、あっけに取られてまた口が開いたままになっている。
そんな真咲と目が合うと、ロングヘアのカレが、不敵な笑みを浮かべた。









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