境界線の果てには。(053)

 そういえば、さっき広斗に言ってた言葉が気になる。
「初めてのオトコ。」とかナントカ。

真咲を上から下まで舐めるように見ると、立ち上がって部屋から出る貴哉を今度は真咲が目で追う。
-小柄だけど、結構鍛えた体してんな・・・
看護師って、まさかアレではいけないよなぁ。患者が倒れるって・・・

別の部屋に行ってしまったようで、真咲は広斗の方に近づくと、頬を撫でた。
「広斗、大丈夫か?水とかもらう?」
頬に手をあてたまま聞くと、うっすら広斗の目が開いて
「・・・うん、少しだけでいい。」
頬に置かれた真咲の手を握ると、掠れた声で言う。

「ちょっと待ってて、今もらって・・」
言いかけた時、貴哉がペットボトルのミネラルウオーターを手にして戻ってくる。

「はい、コレ飲みなさい。・・・あ、起きれないなら、ボクが口移しで飲ませてあげるけど。」
ボトルのふたを開けながら言うので、真咲がすかさず横取りする。
「冗談・・・でしょう?やぁね、本気で怒ってるしー。」
貴哉が真咲の事を茶化すので、お礼を言う間も無い。ここまで運んでもらって本当に感謝しているのに・・・

「貴哉さん、有難うございます。迷惑かけちゃって・・・すみません。もう少ししたら帰るんで。」
広斗の掠れ声を聞きながら、真咲もすいません、と頭を下げた。

「いいのよ、ボクひとり暮らしだから、ゆっくりしていけば。」
そういうと、向かいのソファーに腰を降ろし、足を組んだ。

「あの、ホントに看護師なんですか?」
真咲が、念を押すように聞くので
「昼間の顔はね。これでも優秀な方だと思うわぁ、注射なんかも外した事ないもん。・・ネ?」
横になる広斗の顔を覗き込んで、ニカっと口角を上げた。

「なんで夜は、オカマに?」
真咲が失礼な事を聞くので、広斗はゆっくり寝ていられない。
「おいっ!失礼だろ。オカマじゃなくてニューハーフ・でしょ?」と、広斗が言って。


「あんたたち、ホントに失礼ね。ボクは、ゲイなの。別に女を意識して女装してるわけじゃないから。」
呆れたように言うと、自分の頭に手をやりウィッグを取った。
ウィッグの下は、前に見たとおりの短髪で、化粧を落とせばスポーティーな男性だ。
顔立ちはいい方で、もう少し背が高ければ女の子にモテそうだった。

「三年前は、もっと華奢な感じだったのに・・・」
広斗が残念そうに言えば
「まあね、だから青木くんとエッチ出来たんだもんね?!今のこれじゃあ無理だったでしょ。」
「・・・ま、・・・多分、あの頃は女の子の代わりとしか見てなかったんで・・・すいません」

二人の会話を横で聞いている真咲は、だんだん不安になってくる。やっぱり、広斗の初めてのオトコか、と。







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