境界線の果てには。(003)

昼食後の授業程自分との戦いを強いられるものはない。
空腹は満たされ、講師の説明さえ耳には心地よい子守歌に聞こえる。
広斗は机に肩肘をついてすでに目を閉じている。隣に座る真咲が、ニヤついた顔をしているのも知らずに・・・・・。

真咲は前後に生徒がいないのをさりげなく首を回すふりをして確かめた。
窓側後列に座るのは広斗、真咲の二人だけ。ほとんどは前列に座り、講義を必死でメモしている。今年単位を取らなければ後が大変なのは皆知っているから必死だ。

そんな生徒を遠いところからニヤリと見た真咲は、躰を広斗側に寄せ広斗の太ももに手を載せた。
広斗は全く気付かない。完全に睡魔にやられた様で、口まで半開きになり寝息までたてている。
徐々に真咲の手は上へとあがり、足の付け根辺りで止まる。一瞬、広斗の足がビクンとなったが目は開かないまま。
真咲の指がツツーっと広斗の股間へ延びると、人差し指の爪でファスナーの脇をカリっと掻いた。
横目で広斗の様子を確かめると、まだ目を閉じたままなので再び爪で擦る様にカリカリと掻く。
暫くすると広斗の口からため息とも言えない吐息が漏れる。半開きの口元から舌先が覗くと、上唇を舌先が伝う。
その顔にゴクリと唾を飲み込む真咲。
すると、肘をついて眠って居た広斗の目がうっすらと開き、半開きの視線を真咲に送った。

うわーっ。..............エロい顔。
心の中で呟いた真咲は、広斗が止めないのでそのまま指の腹でぐりぐりと擦る。
広斗がまた目を閉じた。神経を股間に集中しているのだろうか、時々鼻がぴくぴくっと動くが目は閉じられたまま。

調子に乗った真咲の指が、広斗のズボンのファスナーにかけられたその時、もう片方の広斗の手がその指を掴んだ。そうして思いっきり逆方向に逸らされる。

「いてててててっ!」思わず声を上げる真咲。
前方に座る生徒がちらっと振り返るので、身を屈めた真咲は広斗に目をやるが、素知らぬ顔をされる。
くそっ、と心で怒るが、自分が蒔いた種だ。

入学式の時に広斗を目にして以来、ずっと広斗の事を意識していた真咲。

男子学生は皆スーツを着込んで、高校時代とは違うネクタイを締め、あどけなさを残していたが、広斗は違った。
全身黒づくめのデザイナーズブランドらしい少しデザインの変わった上下に身を包んでいた。
身長は普通だが、少し癖のある髪を耳にかけ、男にしては綺麗な顔立ちの広斗の周りには、まとう空気が違うような印象を受けた。
なぜか、周りのものを拒絶するかのようなオーラ。そこに惹かれてしまったのだ。
その後は、遠くから目で追うばかりだったが、ある日エレベーターの中で倒れている広斗に遭遇。真咲はすぐさま医務室へと広斗を背負っていった。
校医の話では、これが入学以来3度目だとか。
俺の庇護欲を掻き立ててくれちゃったんだよね。と、真咲は隣ですまし顔の広斗に目をやった。


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