境界線の果てには。(055)

 土曜日の夜という事もあって、道路はとても混んでいたけど、俺と真咲はタクシーに乗り込むと、後部座席にドサッと座った。

行き先を告げると、真咲が俺の手を取って、運転手に見られないように、自分の膝の上に乗せる。

わざとらしく、互いに反対の方向へ顔を向けるが、意識は手に集まり、膝に置いたまま指を絡めあった。
暗い車内では見えない筈だし、まさか男同士で手を握り合うなんて、思いもしないだろう。

流れる景色を見ていたら、貴哉さんの顔を思いだし、ボンヤリした頭に浮かび上がったのは、過去の俺。





退院できたのはいいんだけど、何故か女子と二人きりになると目眩が…。
酷い時は、吐き気もして、何度も保健室にお世話になった…。

気がついたら、俺の回りには女子が来なくなっていて。

そりゃあそうだ、吐き気をもよおされたら、ショックだもんな。だからって、俺は男が好きな訳じゃなかったし、ただひたすら禁欲して、ついに、何か大事なものが外れたらしい。

高三の夏頃、ネットをみていたら ”ハッテン場” なる界隈があるのを知って、女の子みたいなかわいい顔した男がいるかも、と、すがる思いで出かけてみた。

道行く男を眺めていたら、可愛いのがいて…。おもわずついていったら…違うメンツに囲まれちゃったんだ。

ビビった……。俺が女の代わりをやらされそうになって…。今でも、思い出したくない光景なんだけど…。




キキ…

 路肩に停まった車からゆっくり降りると、真咲が俺の肘を掴んで歩く。
本当はもう治ってるんだけど、こうしてもらうと安心するので、そのままにしていた。

部屋の前まで来ると、肘を掴んだ手はそのまま俺を引っぱって、開いたドアの中へと押し込める。

タン…

玄関先で、ドアの鍵をかけるとすぐに、俺の身体を抱き締めるので、よろけて壁に当たる。
「…真咲…」小さなこえで名前を呼ぶけど、キツく絞まった腕が緩むことはなく、俺の首筋の匂いを嗅ぐみたいにスンスンしてくる。

「真咲って.......ここ玄関だから、部屋・・」
と言いかけたら、俺の唇を覆い尽すように真咲の口が、かぶさってきた。

.........ン........ンン

壁に押し付けるようにして、俺の口を吸いまくる。
-あ~絶対口の周りが赤く腫れそう.................。





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