境界線の果てには。(060)



起き抜けの太陽の光は眩しくて、時計を見れば昼の1時を過ぎていた。
「お、・・・・やべぇ、腹減ったと思ったらもう昼過ぎじゃん。・・・起きろ、広斗!」
「.........ん?.........」

真咲があわててベッドから抜け出すと、まずはシャワーを浴びる。
それから冷蔵庫を開けて何か食べられるものが無いか調べた。が、あまり目ぼしいものはなく、仕方がないので買いに出るか、と服を着た。
「広斗、オレ何か食うもん買ってくるから。」
「........ん..........」

寝ぼける広斗をよそ目に、玄関のドアを開け商店街へと足を向ける。
-昼間は人が少ないのかと思ったけど、案外いるもんだな。
いつも夕方か、平日の昼間には通るけど、ほとんどが主婦、というか女性が買い物している姿を目にする。
なんでオレはこの商店街にマッチしてるんだろう。ヘタすると、広斗よりオレの方が買い物に来ている気がする。

そんな事を思い乍ら歩いていると、あっ、と気付いた事が。
確か、あの末永クリニックってこっちの道を入った所だ・・・・・

なんとなく昨夜の流れで、末永の事が頭に残っていたから、真咲の足も自然に向いてしまった。



病院の前まで来ると、じっと建物を見上げる。
やっぱり33才の若さで開業とか有り得ないんじゃないかと思って・・・。
そこそこ大きな病院にいたらしいし、もっと40歳を過ぎないと患者も付いてこないだろう。なのに病院建てられるってのは、なんかヤバイ事してるんじゃないのか?なんて思ってしまう真咲だった。


「オーイ、何か用事ですか?急患とか・・・?」

真咲の後ろで声がして、ビクツ と飛び跳ねた。

「あ・・・・」
声の人を見るなり、あの”末永先生”だって分かった。

この前隣のおばちゃんが言ってた通り、すごく若く見えて童顔だけどイケメンだ。
ヘタしたら、オレの同級生、・・・高木より若く見えるかも・・・・・。

「えっと、・・・イヤ、なんでもないんです。ただ見ていただけで、・・・その、建物がちょっとカッコイイなって。」
オレは、苦し紛れにそんな事を言ったが、先生はニッコリ微笑むと、
「ありがとう、結構自慢の建築物で、コンクリート打ちっぱなしなんて病院にしたら温かみが無いかと思ってたんだ。でも、カッコイイって言ってもらえると嬉しいな。」

-意外と普通の感じ。
変な趣味とか想像できないな・・・・・

心の奥で、末永の事を値踏みする真咲は、ちょっとカマをかけてみようと思った。
「オレの友人が昔のトラウマみたいなので倒れるんですけど、そういうのってここで診てもらえますか?」
「ああ、もちろん。平日は夕方6時30分まで診療しているから、来るといいよ。」

「そういうのって、治るんでしょうかね?!・・・もう3~4年経ってるらしいけど。」
末永の顔を覗くように言うと

「・・・・それは、難しいね。倒れる要素はいろんな事が合わさって起こるものだし、貧血とか一過性の脳梗塞とか、肉体的なものもあれば、パニック障害みたいに心理的なものもある。・・・まあ、とりあえずは診てみないと何とも言えないかな?」
「・・・はい。」

真咲はちょっと驚いた。変態かと思ったけど、案外ちゃんと医者してるんだ、と。

「良かったら明日にでも来るかい?名前が分かったら、予約入れておくけど・・・・。」

「はい、オレ大学3年で、そいつもなんですけど、”青木広斗”って言います。オレとそいつ、すごく仲良くてこの辺に住んでて、多分5時頃に来れると思うんで伝えておきますよ?」

「あ、おき?・・・・」
一瞬戸惑いを見せたが、すぐに平常の顔を取り戻すと、
「じゃあ、その仲良しくんに伝えておいて?5時に来てくださいって。」

「・・・はい。必ず。」

軽くお辞儀だけして、オレはその場を去ったけど、内心はすごくどきどきしていた。
自分でなに言ってるのか分かんなくなっちゃって、ちょっと敵対心みたいな感情が出てしまったんじゃないかな、と思う。
広斗の名前を出しても、もう知っている素振りはなかった。やっぱり医者だから守秘義務ってやつがあるのかな?
.......オレの方が変なヤツだな。友人の症状をペラペラと・・・・予約まで勝手にしちゃうとか・・・・バカだ。




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