境界線の果てには。(063)




 俺が昔付き合った女の子が、どうしてキレるんだろうと不思議だったけど、やっとわかったよ。俺、相手の気持ちとかあんまり考えてなかった。自分がよかったらそれで良しにしてたんだ。

好きだとか、愛してるなんて言ったこと無い。それが、こういう形で返ってきたんだな。


広斗が深いため息をつきながら、教室へと入って行くと、高木と目があったので、隣に座る。

「なに?暗い顔で……。」
高木に言われて、はぁ〜、と机の上に上体を伏せた。少し顔を横へやり、高木の方を向くと、指で近くへ寄れの合図を送った。

俺の顔の側まで来た高木に
「今度こそ、真咲に見捨てられた。あいつマジでキレたみたいなんだよな。」
小声で言うと、高木は自分の口を手で押さえ、笑いをこらえる。

「てめぇ、笑ってんなよ‼」
俺もキレる。

ふいっと、顔を元に戻すと、
「お前らの喧嘩なんか、興味無い。………俺は彼女が欲しいよ。何が悲しくて男同士の痴話喧嘩の話を聞かなきゃいけないんだ…。勝手にやってろ。」

- くそっ、高木にまで見捨てられた。

回りを見ると、どこにも真咲が居なくて…。

「真咲って今日はコマとってないのかな?」
高木に聞くが、首を傾げるだけ。
まあな、単位を落とすのは自己責任だし、俺は何もやってやれないけど、とりあえず上には上がりたい。…一緒に、さ。


結局、一日真咲の顔を見なかったけど、ちょっと心配になった。昨日の今日だし、俺が怒らせたのわかってるから。

-帰りにちょっとだけあいつの家へ寄ろうかなぁ。
真咲の部屋に行くのは、久しぶりだ。ちゃんと居るといいけど……。



電車を一度乗り換えて、駅前のコンビニに寄った。軽く食べられるものを買って、俺の好きなチョコも買う。あいつに言うと鼻血が出るとか言って買わせて貰えないから。

少しだけ、雑誌も気になったので見ておこうと思い、手にした時だった。
目の前の道路を真咲と元カノの真希が、並んで歩いている。
ガラス貼りの店舗から見る姿は、普通の恋人同士に見えて、広斗は呆気にとられ自分の持っていたカゴを落としてしまった。

- ………な、…に?

土曜の夜に別れた記憶は鮮明なのに、なんで今日は一緒にいる?大学も来なかったのに…。
そういえば、真希ちゃんも来ていなかったっけ………。

ふたりで笑いながら駅の方向へ歩いて行くみたいで、広斗は店舗の中から見えなくなるまで目で追っていた。

…痛い…
胃の上辺りから、ぎゅッて捕まれたみたいに、広斗の身体は痛みを覚えて、その場に座り込んでしまう。






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