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君は腕の中・・・ 26


 マサさんのお蔭で、味気ないそうめんだけの昼食から解放され満腹感を味わうと、功が畳の上に寝転んだ。

「おい、行儀が悪いな」

器をお盆に乗せながら叱る俺に、へへっと笑ってみせる功。
やんちゃな瞳は昔から変わらない。

「腹いっぱいでもう立てない。ちょっとここで横になってもいいだろ?」
そう云うと、隣の斗真くんの腰に手を伸ばし「斗真も寝ろよ」とシャツの裾を引っ張った。

「ちょッ....功!ヤメロ」

斗真くんは、俺の持つお盆に小鉢を乗せてくれている途中で、功に引かれると身体を揺らした。
小鉢を落としそうになると、慌てて俺が受け取る。が、斗真くんの身体は功の横たわる上へと被さってしまった。
その身体をギュっと抱き寄せる功を見て、俺の目がカッと見開かれる。
自分でも分かった。思わず凝視してしまうと、そこから目が離せなくなってしまった。


「も~っ!!危ないんだからー、っとに!」
斗真くんが功の腕から逃れようともがく姿を見て、俺は手も足も出ない。


「...........、功、やめろ、嫌がってんだろ」
そう言うのが精一杯。
二人の間のふざけ合いが、俺にはイチャついているようにしか見えない。

「だって斗真、可愛いから~。いじめたくなるんだよなー。」
「バカ!貴也さんの前で恥ずかしい事云うなって!」

二人のやり取りを聞いている俺は、なんとも言えない心境。
功の気持ちはハッキリわかった。
俺の前でも堂々とイチャつけるほど好きなんだな。斗真くんしか見えていないような目で、彼を見て微笑んでいる。


っはぁー、と溜め息をつくと、俺はお盆を持って立ち上がり台所へ向かう。
背中で二人の笑い声を受けながら、俺の眉間には深いシワが寄っているのを感じる。
嫌悪感?嫉妬?
どっちでもいい、今、俺は自分の気持ちがはっきり分かった。

___斗真くんに恋をしている。これは恋だ。

そして、功への嫉妬の炎は自分でも驚くほどメラメラと燃え上がった。

見たくない。あんな二人の姿はこの目に入れたくない。
台所へ行くと、流しに食器を置きながらドクドクと波打つ胸に手をやった。

___クソッ、なんでこんな_____

おもいきり水道の蛇口を捻ると、激しい水しぶきに叩かれる器を眺める。



「.......貴也?何してるの?」

急に背後からオフクロの声がしてビクッとなった。

「マサさんのコロッケ美味しかったでしょ?!お母さんのも残しといてくれた?」

「.........知らないよ、功に訊けよ。いつまでもくだらない事喋ってないでさっさと昼食っちゃえ。」

オフクロにそう云って、俺は身体を捻ると台所から出ようとした。

「ちょっとぉ~、どうしちゃったの?何かあった?.........タカー?」

「何もないっ!!」


廊下を歩きながら大きな声で云い、そのまま自分の部屋に降りて行く。

ベッドの上に身体を投げ出すと天井を見上げた。

ずっと気になっていた。
罰ゲームでキスをしたのが斗真くんだと知って、近しい所に来たカレに興味を持った。
功と付き合っているんじゃないかって、オフクロが云った時はこんな気持ちにならなかったのに......


でも、自分の性癖に疑問をもった俺は、カレに惹かれていった。
功が云ったように、斗真くんは可愛くて素直で、功じゃなくてもギュって抱きしめてしまいたくなる。
.................そんな事出来ないのに..............



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