境界線の果てには。(070)



 この場所で、何度も目覚めた俺だけど、今日ほど目覚めたくないと思った事は無い。
カーテンに囲まれたベッドの上で、ただ、ポカンと口を開けるしかない俺の頭を真咲の手がそっと撫でた。

カーテンを半開きにした二人の女子は、顔を真っ赤にしながらも、少し硬直した面持ちで俺たちを見ている。
そりゃ、目の前で罰ゲームでもないのに男同士のキスシーンを見せられるとか・・・サイアクだろう?

おまけに真咲のバカが、愛してるとか、なんとか・・・・・

神様..........どこ行っちゃたんですか?

俺は死んだんじゃなかったんだ・・・?

「広斗、大丈夫か?お前頭打ったんじゃない?口、開きっぱなし・・・」

「---ンア?・・・はっ、また医務室に運ばれちゃったんだな、俺。」

「そ、真希の上に乗っかって、死んだように動かなかったよ。だからオレがおぶってやったの。」

-そうか、それはどうも・・・・・

「ちょっと、あんたたち、何あたしたちの事ほったらかしにしてるのよ?!何なの、説明してよ!」
カーテンを大きく開くと、真希が近づいてきて言った。

-あ~~どうしよ。なんか気がひける。

俺が戸惑っていると、真咲が口を開いた。
「オレ達は付き合ってんの!悪いけど、もうお互いの気持ちも通じちゃったから、今さらなかった事にはできない。オレは広斗を愛してる。だから、晴香ちゃんゴメン、諦めてくれ。」

「............あり得ない.......だって、ホモ?じゃないよねぇ?」
真希は信じられないと思って真咲に食い下がるが、広斗の頭を撫でた手が、そっと頬に掛かった髪の毛を耳に掛ける姿を見て、ドキリとした。それがすごく自然で、違和感がなかったから。

真咲の気持ちは100パーセント広斗の側にある。それが伝わってきた。

「あほらしっ。・・・・・帰るから、勝手にやっててちょうだいな。」

そう言ってカーテンを閉めると、医務室を出ていった。
晴香は、一言も言葉を発しないまま、それでも最後には少し微笑んでいたようで......。

俺は、少しだけ心が痛んだ。すごくいい子だったのに、傷付けたかな.........。
けど、こんな形でも、真咲の気持ちが俺と同じなのが分かって良かったと思った。
俺も、神様に言ったのが本人に伝わって良かった。

「広斗、・・・ほんと、大丈夫?・・・・」
真咲が俺の顔を覗きこむので、ちょっとドキっとした。

今さら恥ずかしくなって、顔が熱くなる。だって、真希たちに向かってはっきり俺の事愛してるって言ってた.......。
ヤバイ.......嬉しい.........天にも昇る気持ち。

「俺、も.......真咲の事愛してる、し。」
「うん、分かってるよ。.....だからオレ達は、またここから始まりだな?」
「・・・え?」
「医務室運んで仲良くなれたし、今日は、ここで愛の告白までし合えた。だから、ここから”コイビト”として始めよう。」

真咲の言葉は、広斗の胸を打つ。

ずっと、自分の性に境界線を引いて、その上を歩いて来た。
バランスを保つように必死だったけど、真咲がその線を消してくれたんだ。

境界線に見える線はない。心の壁を取っ払って真咲の胸に飛び込んだら、案外あったかくて居心地が良かった。

「真咲イ.............」


「ん?」



「愛してる。」




「ン。」









---おわり---






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