境界線の果てには。(005)

大学のある駅から電車で30分。駅前には商店街が立ち並び、夕方になると、主婦や会社帰りのサラリーマンが買い物をしている。

その間を抜けてしばらく歩くと、Sマートはあった。

地域密着型のスーパーマーケット。外観は決してオシャレではないが、手書きのチラシが毎日入って、今日の”イチオシ”と題してはかなり安いものが載っていた。

どうして真咲がその”イチオシ”を知っているのかは分からないけど、今どきは携帯アプリでスーパーの値段とか分かるらしいから。

真咲のことだ、きっとそういう情報を仕入れているのだろう。・・・もちろん俺の為に。

「おっ、あったあった。・・・うん、やっぱり安いな。3日分位まとめて買っとこうよ。」

そういうと、カートの上の買い物カゴに肉のパックを3個放り込んだ。そしてまた、カラカラとカートを引きながら物色を始める。

その後ろを広斗がブラブラとだるそうに付いて歩くが、広斗の目は商品よりも周りの客の視線に注がれていた。

ぜってえーおかしいって。男が二人で買い物、しかもカートひいていそいそと食材入れてるし。

真咲と買い物に来るたびに思うんだけど、コイツは絶対俺より先に買い物カゴに手を伸ばし、さっさとカートに乗せる。

そうして、俺には触らせない。自分がカート係のように前を行き、後ろの俺に向かってどれにするか聞くんだよな。

う~ん、これって普通なのか?・・・・

レジの前で順番を待つ間、後ろのおばさんが俺たちをじっと見てる。そして何気にカゴの中身も。

”寮の買い出しにきました”って量じゃないし、どう見ても二人の2~3日分?!ぐらいだよなぁ。なんか恥ずかしい。

「これ、俺の分な。」わざと大きな声で、サイフから札を取り出すと真咲に渡した。

「あ、うん。」真咲が受け取ると、自分のサイフへ入れたので、後ろのおばさんをそっと見る。

もう、俺たちに興味が無いのかどこかを見ていた。少しだけホッとする俺。

いちいちこういう事を気にする俺がおかしいのか、真咲が気にしなさすぎなのか・・・。

男と女のカップルならこんな事気にしないよな。もうラブラブ感を周りにまき散らしてるよ?!

けど、俺たちは男同士。

それに、俺は真咲と付き合っているっていう事も、どこか納得できないでいる。

そんな俺の気持ちをよそに、「じゃあ帰ろっか?」と、目の前の真咲が満面の笑みを向けた。

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