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君は腕の中・・・ 98


 夕方までこれといったお客もなく、家事に勤しんでいたオフクロが店に降りてくると、俺は交代して部屋へと向かった。
その時も、オフクロは俺に言葉を掛けず、斗真くんには交代するからと云っただけ。

あくまでも俺の事は無視なのか避けているのか..............

胸の奥でキュッとした痛みを感じつつ、それでも仕方のない事と諦めた。
一応は飯の支度もしてくれるし、俺の存在を消したいという訳ではなさそうだ。

「 タカにぃ、ちょっといい? 」

部屋のドア越しに功の声が聞こえる。

「 ああ、なんだ? 」

立ち上がってドアを開けると、俯きながらも俺の顔を見つめる功がいて、その表情は何かを決意した様なものだった。
さっき、千里が功の部屋を訪れて何か話していった様だが、帰り際に何も云わず店を出て行ったから気にはなっていた。

「 ちょっと入っていい? 」
「 ああ、いいよ。 」

ベッドに腰を降ろし、膝の上で手を組むと「 結婚の事、考えてもいいって云ってもらえた。」という。
「 おお、そうか、良かったじゃないか。 」
少し意外な答えに驚くが、その続きがあった。 
「 オレが大学を卒業したらって事になった。その時まで気持ちが変わっていなければ、って。 」

「 へぇ、そうか.........。まあ、賢明な選択だな。けど、断わられなくて良かったじゃないか。一応は待ってくれるって事だし。 」

「 うん、まあ、.........そういう事だな。 」


満面の笑み、とまではいかないが、それでも嬉しそうな功の顔を見て少しだけホッとする。
あとは留学の事さえ考えればいいんだと。

「 オレ、なんか焦っちゃってさ。タカにぃがフラれたって聞いて、早く結論出さなきゃって思ったんだ。 」

「 おいおい、そこで俺の事なんか出さなくても......。確かにフラれた事には違いないが、結果良かったよ。あのまま流されて結婚にこぎつけたとしても、いずれは同じ結果になっただろう。 」

功を前にしてそんな事を語る俺は、兄として情けないヤツだ。でも、本当の事。
自分を偽って家庭に収まっても彼女を幸せには出来なかっただろう。そう思った。

「 斗真の事、本気? 」

「 ..................ああ、弟にこういう事云うの照れるし変かもしれないけど。正直に云えば、初めて恋をした気分だ。 」

「 マジ?!.......ああ、ごめん、おちょくるつもりは無いから。でも、自分の肉親にそう云う性癖の人がいるってのが不思議でならない。 」

「 そりゃあそうだ。俺自信が一番びっくりしてる。27歳にして初めて気づいたんだからな。 」

「 オレは斗真にそっちの気があったのがビックリだった。今まで全く気にしてなかったからさ。......実は、ちょっと戸惑ってるんだ。 」

そう話してくれる功の表情から、親友と呼べるほどの友人に対する戸惑いが感じられた。
俺に正直に話してくれるのは有難い。そして、それをどうにかしたいと思っているのか。



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