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君は腕の中・・・ 103 *最終話*



 ドアを開けて、斗真くんの華奢な後ろ姿を見送ると、俺も部屋に戻った。
功と斗真くんがどんな話をするのかは分からない。きっと二人だけが抱える葛藤みたいなものがあるのだろう。

斗真くんはああ見えて案外気丈なところがあるから、そこは心配ないと思うが......。
功が身体のわりに心配症なところがあったなんて、今更気付いたけれど。それでも、アイツは心の広い人間だ。きっとこれからも、斗真くんを色眼鏡で見る事なくやっていけるだろう。そう思った。

ベッドに寝転んで見上げた天井に、死んだオヤジの顔を思い浮かべる。

いつも日焼けしている様な浅黒い体格のいいオヤジが、あの最後の日に見せた顔。
もう開かなくなった瞼の奥で、何を見ていたんだろうか。
声にならないオヤジの弱々しい息遣いだけが虚しくて、掛ける言葉を選んでいた俺。

_____ オフクロの事は心配するなって、............ 云ってやれば良かったな。 



もし、今オヤジが生きていたら、この俺の事をなんて云うだろう。
男が男を好きになるなんて、晴天の霹靂だってビックリしてひっくり返りそうだ。けど、俺が選んだ人だからって、最後はきっと許してくれるんだろうな。

オフクロの口から聞いた言葉を頭の中で何度も確かめる。
そして、ちゃんと胸を張ってオヤジの墓に報告できる日が来たら嬉しい。その日の為に、俺はこの店も斗真くんの事も、そしてオフクロや功の事も大事にしていきたいと思った。



- - - 

「 ...... 貴也さん、........起きて下さいよ。 」

甘い声で名前を呼ばれ、身体が陽の光に包まれたみたいに温かくなる。
ゆっくり瞼を開けた俺に見えたのは、小さな八重歯を覗かせて微笑む斗真くんの姿。

「 ぁ、おはよ 」

「 おはようございます。お母さんが朝ご飯出来たから呼んで来てって.......。 」

「 ああ、寝過ぎたな、........ うん、今起きる。でも、その前に.......... 」
言葉の途中で、俺は斗真くんの伸ばした両腕をとると、そのまま身体ごとベッドに引き寄せた。

「 あ、 」

ボスッとバウンドして、俺の身体の上に倒れ込む斗真くんをギュっと抱きしめれば吐息が漏れた。
瞬間、斗真くんの髪からは微かにみそ汁の匂いがした。

「 今朝も斗真の味噌汁? 」
髪を撫でながら訊く俺に、「 はい。....... 明日からは暫く味わえないので、沢山飲んでくださいね。 」と云った。

「 ............そっか、..............そうだな、味わってちゃんと覚えておくから。 」

「 はい、今朝のは具もたっぷり入れておきました。 」

「 うん、ありがと。 」

斗真くんの身体を持ち上げると、俺はもう一度背中に回した腕に力を込める。
それから、みそ汁の薫りがする髪にチュッとくちづけるとベッドから降りた。

今日でアルバイトは終わり。
斗真くんと功は、また自分たちの家に戻って行く。
夏休みはまだあるが、これからは課題と勉強の毎日を過ごすそうだ。

ここで斗真くんと過ごすのも今朝で終わり。
いや、きっとまたいつか、その日は来る。が、その時はまた違った形で斗真くんを迎えるんだろうな。
___俺の恋人として。

階段を上がる俺の背中を後ろから斗真くんが押す。

その掌の力と温かさを胸に刻んで、今日という日を締めくくり明日からの力と変えて行こう。


台所へ向かうと、先にテーブルについていた功が「 ねぼすけだなー。タカにぃには目覚まし係も必要だな 。」と云って笑う。

「 みそ汁係と掛け持ちは斗真くんが可哀そうよ。自分で起きなさいよね?! 」

そう云って、俺と斗真くんを見たオフクロの目は優しかった。


「 はいはい、これからはちゃんと自分で起きます。取り敢えず、今朝は斗真のみそ汁を心行くまで味わってから、な?! 」

俺はそう云うと席に着いて斗真くんがよそってくれた味噌汁に口を付ける。
みんなに見守られて一口飲むと、それは幸せの味がした。
斗真くんの愛情のこもったみそ汁に、「 やっぱり美味いなぁ。 」と呟けば、「 幸せに浸ってるとこ悪いんだけど、早朝から配達の予定が入ってるから、さっさと味わったら行ってね? 」とオフクロが云う。

「 は~い。 」

俺の生返事に、功や斗真くんからは笑いが起こって、いつもと同じような平和な時間を過ごせる事に感謝する。
明日からは又、オフクロと二人の朝ご飯を味わう事になるが、俺の胸の中にはいつでも斗真くんがいる。

この腕にキミを抱いた事はずっと覚えているだろう。
そして近い将来も、この腕の中にキミがいる幸せを味わえるように、俺は頑張るつもり。


「 斗真、ごちそうさま。 」

そう云ってカレの肩をポンと叩くと、ニッコリと微笑んでくれた。


「 また、作りに来ますね?! 」
「 うん、よろしく頼む。 」


「 さあー、着替えて配達行くか~。 」
そう云いながら、俺はみんなのいる台所を後にした。

___背中に感じる温かいぬくもりに、今日も感謝しつつ働こうっと!!



(完結)


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 103話にて 「 君は腕の中・・・ 」 完結となりました。

あまり濡れ場もなく迎えてしまった最終話。長い間ご覧くださり本当に感謝いたします。

その内後日談とか、そういうのもあげていけたらいいな、と思いますので、その時はまた覗いてやってください。

本当に有難うございました。+゚。*(*´∀`*)*。゚+

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