境界線の果てには。(006)

カン カン カンツ っとアパートの階段を駆け上がる真咲の後から、のそっとついていく広斗。

「おーい!早く開けてくれよ、重いんだからさぁ。」
「わかってるって。もう、なにはしゃいじゃってんの?お兄さんは疲れたのよ?!」

わざとふざけて言ってやるが、ナンのリアクションもねぇ。
「チツ。」
お前のその高揚してる顔、自分で分かってんのかね?

広斗は鍵を差し込みドアを開けると、先に真咲を入れてやった。

早速真咲が冷蔵庫を開けるが、そんなに大きくないのですぐにいっぱいになってしまい、野菜室からネギがはみ出している。
それを無理やり押し込むから、ドアを閉めたら青い部分がちぎれてしまった。

「おぉい、何やってんだよ。ちぎれたじゃんか。」
怒って言うと、真咲が振り向きながら
「どうせ、こんなとこは食わないだろ?捨てるんだから無くってもいいだろ。」

はあ?捨てる?って、この青い部分の事か?
「なにいってんの?食べるっしょ!ふつう。」

「え、・・・いや、俺んちは食べないな。」

真咲の言葉に驚いた。

「俺んちは普通に鍋とか入ってたぜ。まあ、ちょっと歯ごたえあるんだけどさ。」
広斗がいうので、真咲がちぎれた青い部分を拾って冷蔵庫に入れる。

「あっ、お前、それ洗ってから入れろって!!!」
「いいじゃん、料理するとき洗うし。」

「もう、・・・信じらんねえ。がさつにも程がある。」
広斗が冷蔵庫から取り出し洗い始めたので、真咲は口を尖らせながらほかの物をしまい込んだ。

もう、何回も家で料理作ったりしてるのに、こんな些細な事で互いの育った環境の違いとかが分かると、新しい発見が新鮮に思えるから不思議だ。お互いのことは、この1年半の間によーく分かってるつもりになってた。

けど、それがどうしたって話だよな?

男と女なら、これから先結婚とかするかもって思うとこ。
それで、互いのスキキライを把握して、暮らしていくんだろうけどさ。

俺たちは、卒業するまで。
広斗はそう思いながらラップを広げると、丁寧にネギを包んだ。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント