『曇天の月』 008


 ・・・・キャー、やあねぇ~・・・・・もぅ・・・・・

言葉遣いに反比例した野太い声が飛び交っているが、ここはとあるゲイの集まるバーで、今日は飲みたい気分だったから一人でやって来た。
司はこういう店が好きじゃないらしい。いかにも相手を探しに来ました。的なのがいやらしいとか言ってた。そのくせネットで、俺と知り合ったんだけどな・・・

「アラぁ、今日はツカちゃんはいないのオ?・・・あ、もしかして逃げられた・・・とか?」

「はぁ?まっさか!!・・・あいつは忙しいんです。それに俺のヨメは逃げませんからね!」

カウンター越しに、ゴツイ手でカクテルを差し出すと言ってくるから俺も言い返す。


ここのママ(?)とは高校生の時からの付き合い。
大きな声では言えないけど、俺は高校2年の時から年齢を偽って出入りしてたんだ。
よく、ハッテン場に行くやつとかいるけど、さすがに怖かった。
得体のしれない男とセックスするとか・・・・
ここなら、少なくともこのママが相手の人となりを教えてくれる。
せめて変態じみた行為は避けたいからな。


「そうそう、あんた仕事はどうなっちゃったのよオ。つぶれそうだって言ってたじゃない。」
ゴツイ手を顎にあてて聞いてくるが、俺がタバコを一本取り出すとすぐに火をつけてくれる。

「ああ・・・まあ、ね。」
一服吸ってから、ふうーっとタバコの煙を吐き出すと、話を続けた。

「なんか、裁判所から依頼された弁護士もいて、あと、裁判所が任命した税理士が帳簿を見に来るらしい。」

「ぇえ?裁判所から?・・・やっだぁーなんだか大事じゃないのよ。」
ママは付けまつ毛をバサバサさせながら目を向いているが、昔なじみだから俺の仕事の事とかも話していた。

小さな店でも経営者だし、そういう意味では勉強になった事もある。俺みたいなひよっこが、銀行の融資の人間と普通に話なんかできるわけがない。ママに教えてもらったことが役にたった事もあった。

「まあ、債務の何パーセントかは免除してもらって、後は残りをどうやって返済していくか・・・だろうな。」
俺があっけらかんと言ったから
「なによオ、余裕ぶっこいてんじゃないわよ?あんた二代目じゃない!何年かかると思ってんの?」
俺のタバコを取り上げそうな勢いで言ってくる。

「別に・・・余裕なんか・・・ないけどさ。」
俺が言うと、ママは別の客に呼ばれて行ってしまう。俺を諭すような眼差しを向け乍ら、また別の笑顔を客に向けた。


ホント、余裕なんかない............。

実際、債務のほとんどは銀行の借入だし、億の債務の何パーセントが免除されたって、残りを返していけるかなんてわからない。

- ぁああああ・・・なんで此処へ来てまで悩まなきゃいけないんだよぉ!!

忘れたくて飲みに来たってのに・・・・


・・・・司がいないから悪いんだよ。・・・・こんな日に、カワイイのいたら連れて帰っちゃうよ?・・・ったく!!


「ねえ、独り?」

「え?」

独りでぶつぶつ言ってた俺の横に来たのは、金髪のカワイイ男だった。


- - - あ・・・・ウソ!・・・・・ヤバくない?俺・・・・・・・・・・・








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