『曇天の月』 011


 「ねえ、パンツ貸して・・・!」

唐突におーはらが言うから
「ぇえっ!!」と声が出てしまって、慌てて口を押えた。

「お、お前・・・人のパンツ穿く気か?」

「え、ダメなの?別に洗濯してあるんならいいんだけど・・・」

- 信じられない・・・・パンツはダメだろ?! いくら洗濯してあったとしても!

「あ、新しいの出してやるから・・・ちょっと待ってろ・・・」
そう言ってクローゼットの中を探す。確か前に貰ってそのままのが・・・・

「あった、あった。これ・・・・」
おーはらの足元に放り投げると、それを取り上げてビニールから出した。

「すごっ、これブランドものだ・・・。趣味いいねぇ」
わざわざ穿いたのを俺に見せるから、目のやり場に困った。
男の裸を見たって仕方がないと言われようが、俺は女の裸に興味はない。
それよりも、おーはらの様な薄い筋肉のついたしなやかな身体に惹かれるんだ。
司もそういう身体をしていたから・・・・

「これ、貰っちゃってもいいの?それとも洗って返そうか?」

「やるから。返されても困るし・・・・人が穿いたものはちょっと、な。」
俺は、自分もシャワーを浴びようとシャツを脱ぎながら言った。おーはらは着替えたらすぐに出て行くと思って、そのまま気にせず風呂場へ行ってズボンを脱ぐが、あっ、と思い出して部屋へ戻る。

「そういえば、金、いくらだ?ビールと、ここまでのタクシー代、往復払うから。」
俺は自分の財布を取り出すと、2万円をおーはらに渡した。

「え、多いよ・・・! 一万で十分足りるからさぁ。」

「いや、いいって。ここまで来させちゃったし、悪かった。取っとけよ。」
そう言って無理やりおーはらの胸に押し付けると、
「そう?じゃあ、貰っとく。でも、タダじゃ悪いし・・・」

「お、わっ!!」
急におーはらの手が俺の股間に伸びてきたからびっくりして叫んでしまった。

「ちょ、っと・・・バカ、止めろって!」
股間に伸びた手を掴むと捻り上げておーはらの頭上に持っていく。

ガチャツ - - - 

その時、俺のアパートの玄関ドアが開く音がして、俺はおーはらの腕をつかんだまま視線を移した。
- - - あれ・・・・?カギかけ忘れてた?
と、冷静に思い出してる場合じゃない。

目の前に居たのは、司だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 パタン - - - 


ドアが閉まり、おーはらと俺は目だけを見合わせると、「あ―――――ッ」と叫ぶ。

パンツを穿いただけの男が二人。
腕を持ち上げ、身体は密着している。誰がどう見たって、俺がおーはらを押し倒そうとしているみたいじゃないか?!



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