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[ 身も蓋もない話をしようか。 ] #33



 久々に寝不足の目を擦りながら大学に着くと、山口が居ないか確かめた。
今日は2限目から。出来るだけ奥の席に座り友人と顔を合わせないように机に伏せる。
まだ頭の中が混乱していて、山口にどんな態度で接したらいいのか分からなかった。

そんな俺の心配をよそに、顔見知りの友人が俺を見つけると隣にドカッとバッグを置いて座ってしまう。

「おはよ。どうした?まだ眠そうだね。」
「あ、.....うん、まあね。」

声を掛けてきたのは竹中という男。
いたってシンプルな顔立ちで、身長もそこそこ。特に目立った存在ではないが、山口とは高校が一緒だったらしい。

「山口とは一緒じゃなかったんだ?いつも見かけると二人でいるのに珍しいね。」
そう訊かれて、「いつもって事はないよ。」と応えた。
別に示し合わせて二人でいる訳じゃないし、昨日の様子からして山口が俺に絡んでいただけだったのかもしれない。

「アイツ、.....山口ってカノジョいなかったっけ?」
俺は竹中に訊いてみる。山口がゲイとは思えなかったし、期間は短くてもカノジョと呼べる女がいたはず。

「山口のカノジョ?高校の時に居たなぁ、確か。でも大学決まって遠距離になるから別れたって聞いた。........どうして?」

「や、別にどうもしないけど、俺はアイツのカノジョって会った事ないし、ただ気になっただけ。」
少し苦しい言い訳。もう2年以上付き合っているのにカノジョの陰が見えなくて。俺に合わせてそういう話をしないのかと思っていた。

「おれからしたら山口より木下の方が謎。女子からの注目集めてるわりに誰かと付き合ったって聞かないもんな。」

「そんな事ないさ。俺は来るもの拒まずだし、分け隔てなく付き合いたいと思ってるよ。ただ、最近は面倒でさ。」

「ははは、羨ましいお言葉ですね。山口も木下もモテすぎて、女の子の方が遠慮しちゃうんじゃないか?」

「.................ンな事ないだろ?!」

二人でそんな話をしていると、やがて講師が現れて俺たちは静かに前を向いた。
視界に入る人影を見る限り、山口の姿は見当たらなかった。この教科は取っていないのか、と思いながらノートを広げる俺は、心の何処かでホッと胸を撫でおろしていた。



結局、この日は山口の顔を見る事もなく、授業が終わると俺は友人たちと一緒に駅へと向かう。
頭の中にはおぼろげながら俺にキスをしたアイツの顔がチラついて、時折ハッとなる事もあるがそれでも普通の日常を過ごす事が出来た。

部屋に戻ると、もう一人の気がかりな人物の事を思い出す。
亮さん、今日は仕事に行けたようだな。俺に助けを求めるメールも来ない。きっと竜司も幼稚園に行ったのだろう。
そう思うと少しだけ力が抜けた。



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