『曇天の月』 013


 - なんなんだよー、もう!!

午前中をイライラしながら過ごした俺に、追い打ちをかけたのは親父だった。
「3時から津田先生の事務所へ行ってくれ。譲渡の件で話があるらしい。」

- 自分で行けっての!! なんで俺が代理なんだよ?! 腹たつーっ

車のハンドルを握る手が汗ばんできて、さらにいらだちは募るばかりだ。
司の携帯は相変わらず反応無いし、俺が悪かったとは思うけど、弁解の言葉も聞いてもらえないんじゃどうしろってんだよ!

昔からそうなんだけど、すぐに頭に血が昇る俺をなだめるのが司の役目で、俺が司をなだめる事なんてなかったんだ。今さらだけど、こういう時オタオタしちゃうよなー。しかも、本当に怒っているのかどうかすら分からないって・・・・・・
ふぅ~っとため息をつくと、弁護士事務所に着いた。

「こんにちはー。真柴ですー。」
石畳の階段を上がって行き、玄関を開けるが、入口からは中が見えなくて、少し待っていると「はーい。」と男の声。

普段は、津田弁護士の方がうちの工場へ来るから、俺がここへ来たのは2度目。
前は、ちょっと神経質そうな女性が対応してくれた。
弁護士の事務方って大変だろうな・・・なんて思ったっけ。

「お待たせしました。こちらへどうぞ。」
衝立から覗かせた顔を見てビックリした。

俺の目の前に現れたのは、まさしく映画で見るような白馬の王子キャラ。
外国人(?)
「あ・・どうも。真柴です。」

「はい、お待ちしておりました。すみません、津田が少し遅れておりまして、こちらでお待ちください。」
そう言って相談室へ案内される。

俺より10センチぐらい高いのかなぁ、綺麗な金髪交じりの茶髪に、琥珀色の瞳が印象的。
瞬間、お仲間(?)かと思ったが、どうなんだろう。
俺はそんな事を考えながら、椅子に座ったが、気になって彼の顔ばかりを見てしまった。

「あの、僕、日本人ですから。ちゃんと日本語通じますよ?安心してくださいね。」

「ぇ、ああっ、ごめん。そういう風に見てたんじゃなくて・・・イケメンだなって思って・・・はは、ごめんね。」
俺がじっと見るもんだから、彼は困惑してしまったのか、眉を下げて笑っていた。

「新しい弁護士さん?」
気になったから聞いたけど、どう見てもまだ若くて大学生風だった。それでも今どきは見た目の年齢なんてあてにならないから。

「はは、僕は事務の手伝いをさせてもらってます。大学生なんですけどね。」
言いながら前髪に伸ばした指は、白くて長くて、また見惚れる。
こういう男なら抱けるな・・・・なんて、よこしまな考えが頭をよぎると、また司を思い出した俺。

「じゃあ、少しお待ちください。」
俺の王子様が部屋を出て行く。無機質な空間にポツンと残されると、無性に寂しくなった。



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