『君と まわり道』 63

  何かに足元をすくわれた気がした。ヘトヘトで立っているのも辛いっていうのに、自転車のペダルに足を乗せるが感覚が無くて.......。そりゃあ、仕事だし仕方がないけど。オレだって別に期待していた訳じゃない。でも、この数日は入口まで行っては回れ右して戻って来るような、ドアノブに手を掛けては空回りして入れないような日々を過ごしてきたんだ。それが、’勝手に飯食って先に寝てろ’.............?はぁ.....................

『君と まわり道』 62

 週末、ついにやって来た金曜日...............。店では、午後からも買い物客が絶えなくて、3時頃にやっと昼飯を食べるという具合。腹ペコのオレは休憩所に向かうと社員の食堂に行き食券を買った。トレーにうどんと稲荷寿司を乗せて長テーブルに着く。今日はどの店も混んでいたのか、こんな時間なのに昼食をとる人が多かった。テーブルも、いつもなら空があって独りで一つのテーブルを使うくらいなのに、今日は隣に人がいる。「...

『君と まわり道』 61

 拓海は、どこまでオレとの事を考えているのか.............。ずっとこうして、二人でやって行きたいと考えているのか。それとも、いずれは結婚して家庭を持つつもりなのか.........。オレを見ているからと、両親に言ってくれた言葉。本当に有難いと思った。でも、その本当の意味をオレは知らない。聞くのも恐いし...................。台所で食器を洗い終わると、「さっきの話、アツシに任せる。此処でもいいっていうならそれで...

『君と まわり道』 60

 拓海の身体を持ち上げると、テーブルにそっと降ろす。腰掛ける拓海と向き合うと、ゆっくり顔を近付けた。最初は互いの瞳を見つめ合って...........。そのうち、拓海の腕がオレに伸びると背中にまわった手に力がこもる。ギュっと強く抱きしめられて、オレの手も拓海の腰にまわり互いに身体を密着すると唇を重ねた。 チュッ、というリップ音が鍋の沸騰する音にかき消され、それを耳の奥で聴きながらもオレたちは唇の熱を確かめ合...

『君と まわり道』 59

 ミサキ達より先にアパートに着いたオレは、急いで階段を駆け上がると拓海の部屋のドアを開けた。拓海はまだ戻っていなくて、キッチンのテーブルの上に材料を出すと、ひとまず冷蔵庫に仕舞い込む。 多分作るのは拓海。オレは一応買い物担当、といったところだろうか。- そう言えば、飯、炊いてんのか?朝は全然気にも留めていなかったし、炊飯器のスイッチを覗いて見たらちゃんと保温になっていた。オレの寝ている間に、拓海が...

『君と まわり道』 58

 いつも通りの店内は、これといって代わり映えはしなかった。敢えて言うならば、オレのディスプレイが思いのほか好評で、アメ車柄のオープンシャツはすでに売り切れて在庫が無いという事。広報の人から褒められたと、山野辺さんが喜んでいた。そして、秋冬物の発注の時にはオレを本社へ連れて行ってくれると言う。「一年、頑張ってるもんね?!そろそろ正社員になれるんじゃない?」と、山野辺さんが微笑むと言ってくれた。「そう...

『君と まわり道』 57

 「分かった.........、元はと言えばオレがお前に変な気を起こしたんだ。始めたからには後戻りはしない。」そう言って、オレは拓海の背中から離れると肩を掴んで向き直らせた。仰向けになった拓海の身体を跨ぐようにオレが馬乗りになると、一瞬表情が強張る。男前な言葉を発しても、やっぱり拓海だって恐いんだ。どこで聞きかじったか知らないけれど、男と男が交わるという事はそんなに簡単なものじゃない。「もし、途中で嫌だと...

『君と まわり道』 56

 頬から首筋へ落とす唇が、しっとり湿った拓海の襟足に掛かると、そのままうなじを見せてうつ伏せになった。裸の背中にうっすらと盛り上がる筋肉。もう何年も日には焼いていないんだろう、白い肌が目の前に広がると、オレは手の平を乗せてみた。手の平で滑らかな肌を確かめるように撫でると、そこにもキスを落とす。チュッ、というリップ音が規則正しく刻まれて、それに合わせて拓海の背中の筋肉も波打つ。拓海の横に身体を滑りこま...

『君と まわり道』 55

 今夜の拓海は、ノンケのくせにあっさりとオレの唇を受け入れ、舌を絡めても無抵抗でされるがままになっていた。あんなビール一杯で酔ってしまったのか.........それでも、電気の点いていない暗い玄関先で交わす口づけは、十分すぎる程身震いして酔いそうだった。.........はぁ、..................ん..............ん................オレの舌が唇から顎へと伝うと、拓海は首を仰け反らせて喉仏を突き出した。それをオレの唇がゆ...

『君と まわり道』 54

 運ばれてきたスペアリブに食いつきながら、無言で顔を見合うオレたち。ビールで脂を流し込むと、拓海がオレの顔を見て言った。「昨夜さ、鴨川のトコにあるバーに連れて行かれたんだ。」オレは、昨夜の電話を思い出した。鴨川のナントカって店の近く.........。結局店の名前は出て来ないが、「へえ、」と聞き流す。「取引先に4つ上の人がいてさ、その人に連れて行かれたんだけど、京都の女の子ってなんか癒される。あの言葉使いか...