【妄想男子と恋のゆくえ。】55

 鳥居や横山のいる所では、何も言っては来なかったけれど、確実に気分を害している素振りの森は、帰り道一緒に歩いているにも関わらず俺に話しかけてこない。こういう時って、自分から話しかけるべきなのか.....。俺が悪い事をして怒らせてしまったのなら仕方がないけど、森はきっとなつみちゃんにヤキモチを焼いているんだと思った。俺が自分以外と仲良くしているのは嫌みたいだ。俺は森がもっと他の人と仲良くしてくれたら嬉し...

【妄想男子と恋のゆくえ。】54

 ホームルームの始まる前に、鳥居が俺の所にやってくると、「研、今度の日曜日暇?」と聞いてきた。「え?暇っていえばいつも暇だけど・・・何かあるの?」座ったまま鳥居の顔を見上げると、おもむろに目尻を下げて俺の肩に手を置く。「.........なに?気味が悪いんだけど、はっきり言って!」鳥居の置いた手を避ける様にからだを引くと言ったが、今度は顔を近付けて来て耳打ちした。「ダブルデート。今度は遊園地だって!行くだ...

【妄想男子と恋のゆくえ。】53

 「じゃあ、ご馳走さま。CD聴かせてくれてありがと、おやすみ。」「ああ、また明日。」マンションの玄関で森にお礼を言って別れる。俺が通路を歩いてエレベーターに向かうまで、森は玄関のドアを開けたままずっと見ていた。チラッと顔を向けて、降りてきたエレベーターに乗り込む前に、もう一度森の方を見ると軽く手を上げて振ってみる。すると、森も手を上げて返して来た。- ふッ、........まだ見てやがった。ひとり可笑しくな...

【妄想男子と恋のゆくえ。】52

 森の机に置かれた写真。写っているのは、俺と森だった。’こばと幼稚園’のネームが入った体操服を着て、何故か泣きべそをかく俺は、片手で涙を拭くようにして、もう片方は隣で仁王立ちの森の手をしっかりと握りしめていた。全く記憶にはないんだけど、写真があるって事は何かあってこういう状況になったってことだ。俺の記憶は、いつも俺が森と手を繋いでいたって事。それは、森が周りから浮いていて友達がいないからだと思ってい...

【妄想男子と恋のゆくえ。】51

 バスを待つ間、俺の頭ン中は色々な思考が巡っては消え、自分で何を考えているのか分からなくなる。だから、目の前に森の顔が来て目が合った時、死ぬほどビックリして「おッ、あわわわッ」なんて恥ずかしい声をあげてしまった。一斉に周りの生徒から注目されると、森の身体の影に隠れる俺。「なにビックリしてんの?」森は涼しい顔で俺を見ると言った。「だッ、て.........急に現れるから......。今日も一緒に帰らないのかと思っ...

【妄想男子と恋のゆくえ。】50

 一番奥の突き当りの棚は、年代物の本が置かれているせいか誰も近寄らないから静かに過ごせた。図書室ではお喋りは禁物。でも、ここは誰が管理するわけでもない。入口の図書委員もカウンターの陰で漫画を読んでいるくらいだ。少しぐらいの話し声は聞き流していた。俺が床に腰を降ろすと、その横に森も同じように座る。「......お前も居眠り?」そう訊くと、「いや、ケンちゃんを起こす係。」と言って小さく笑った。「.....はは、...

【妄想男子と恋のゆくえ。】49

 「おはよう。」「おはよ。」後ろの席の森と目が合うと挨拶を交わす。その後、ちょっとだけ目を逸らせた俺。昨日の事があって、森の目をまっすぐに見る事が出来なかった。やましい事は何もない.......はず。でも、なんとなく今朝の俺はおかしいんだ。夢の中に森が出て来るし、鳥居は去年の事を思い出させるし.......。席に着いた俺の背中に、森の視線が痛いぐらいに刺さる。もう、何度も味わう無言の問いかけに、俺は応える事が出...

【妄想男子と恋のゆくえ。】48

 月曜の朝は身体が重くて.....。昨夜は早く寝たつもりだったが、途中で森が夢に出てきたから目が覚めてしまった。俺の顔にくっついて離れない夢を見て、これは昨日の事がそのままじゃないかと焦る。「おはよ~、昨日は楽しかったな!」「ああ、おはよー、だな!」鳥居と昇降口で会うと顔を見合って笑った。靴を履き替えながら、「あの後さ~、」と言われてドキリ。「な、なに?!」と、意味もなく大きな声で聞いてしまう。「どし...