『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-37

 玄関の壁にもたれ掛かって5分。 床に座っていると腰に響くと言って、夏目さんが椅子を持ってきてくれると、ゆっくり上体を起こしてそこに座り直す。 アツシはまだ来なくて、車だと15分くらいの所だろうと思うが、この場所も分からないのかもしれない。「この間から、私、迷惑ばかりかけていますよね.....。」 夏目さんは、玄関に椅子を持ってくると、そう言いながら俺を立ち上がらせる。床に座っているのが辛いと思ってくれた...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-36

 電車の窓から見える風景が郊外に近付いてくると、車両に残る人もまばらになる。 シートに浅く腰掛けて、両足を放り出す様に座っているのは、俺と同じようなスーツ姿のサラリーマン。そこに混じって女性の姿もちらほら見える。見るからに飲んで帰る途中の様子で、ほとんど眠っているのか頭はうな垂れたまま。 最近は女性の営業職も増えていて、さっきの恵比寿さんたちじゃないけど、男より酒が強い人も多い。そういう意味では男...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-35

 --------マイッタ-------- 今日は出張だというのに、昨夜の頑張りが今頃腰に来た。西さんと電車に揺られて千葉のT百貨店に着くころには、俺の腰も痛みだし立っているのが辛くなる。「山城さん、少し痩せました?」「え?いいえ、変わらないと思いますが。」 担当の恵比寿さんという女性に言われて、思わず上から自分の身体を見下ろすが、特に体重を測る事もしていないので良く分からない。痩せたというよりも、やつれて見える...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-34

**R18です。** アツシの柔らかい唇で、俺の耳に、うなじに、肩に...........優しくキスを落とされると全身の肌が粟立つのを覚えた。ゾクリとする快感が俺の内部に押し寄せてくると、この手でアツシに触りたいという欲求が堪えきれなくなるが、俺の両手はアツシが頭を拭いていたタオルで固く縛り付けられて、触る事が出来ないでいた。「これ、外せ----。なんでタオル、」「オレのいない隙に別の男を連れ込んだバツだ。」 言いがか...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-33

 ------- パラパラッ、 ------ バサッ  頭の近くで何かを投げつける音がして、ビクッとした俺は慌てて目を開けた。「.......アツシ...........?」 見上げると、ソファーで横になって寝転ぶ俺を見下ろす様にアツシが立っている。 その視線が床に落とされたので、俺もそれを辿って床に目をやると.....。 コンビニで買ったグラビア雑誌が床に落ちていて、丁度水着姿の放漫な胸を晒した女の子のページがペラリとめくれて開い...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-32

「良かったら珈琲でも飲んでいく?」 リビングのインテリアが気になるのか、まじまじと見ている吉田くんに言えば、「あ、すみません、帰ります。」とお辞儀をした。「そう、梨を有難う。今夜アツシは帰りが遅いって言うから、明日にでも一緒に頂くよ。」 俺は吉田くんにそう言って、玄関へ送ろうと付いて行く。「あ、.........そう言えば、シオンの相談事っていったい何だったんですか?」 玄関で靴を履きながら、俺の顔を上目...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-31

 シャワーを終えた俺は、歯磨きを済ませると寝室へ行った。 すでに、アツシはベッドで横になり眠っているのか、目を閉じて動かない。半乾きの髪の毛もそのままで、声を掛けるのをためらった。- 俺は明日も休みなんですけどねー。 心の中で残念がる俺だったが、アツシが疲れているんじゃスキンシップも出来ない。下手に手を出したら本気で怒られそうだ。 そっとドアを閉めると、もう一度リビングへと戻った俺はソファーに身体...

『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-30.

 いつもなら、少々疲れていても食事の時にはしゃべってくれるアツシが、今夜にかぎっては寡黙な男になっている。「美味いか?」 俺が、目の前の野菜炒めを指して聞く。「ん?..........ああ、美味い、っていうか別にいつもと変わんないよ。大抵が炒める料理だしさぁ、味付けはその都度違うけど.....。拓海の料理は美味いよ、オレは好きだし。」 そんな事をいうアツシだったが、無理に合わせてくれているようで、なんとなく変だ...