『君と まわり道』 59

 ミサキ達より先にアパートに着いたオレは、急いで階段を駆け上がると拓海の部屋のドアを開けた。拓海はまだ戻っていなくて、キッチンのテーブルの上に材料を出すと、ひとまず冷蔵庫に仕舞い込む。 多分作るのは拓海。オレは一応買い物担当、といったところだろうか。- そう言えば、飯、炊いてんのか?朝は全然気にも留めていなかったし、炊飯器のスイッチを覗いて見たらちゃんと保温になっていた。オレの寝ている間に、拓海が...

『君と まわり道』 58

 いつも通りの店内は、これといって代わり映えはしなかった。敢えて言うならば、オレのディスプレイが思いのほか好評で、アメ車柄のオープンシャツはすでに売り切れて在庫が無いという事。広報の人から褒められたと、山野辺さんが喜んでいた。そして、秋冬物の発注の時にはオレを本社へ連れて行ってくれると言う。「一年、頑張ってるもんね?!そろそろ正社員になれるんじゃない?」と、山野辺さんが微笑むと言ってくれた。「そう...

『君と まわり道』 57

 「分かった.........、元はと言えばオレがお前に変な気を起こしたんだ。始めたからには後戻りはしない。」そう言って、オレは拓海の背中から離れると肩を掴んで向き直らせた。仰向けになった拓海の身体を跨ぐようにオレが馬乗りになると、一瞬表情が強張る。男前な言葉を発しても、やっぱり拓海だって恐いんだ。どこで聞きかじったか知らないけれど、男と男が交わるという事はそんなに簡単なものじゃない。「もし、途中で嫌だと...

『君と まわり道』 56

 頬から首筋へ落とす唇が、しっとり湿った拓海の襟足に掛かると、そのままうなじを見せてうつ伏せになった。裸の背中にうっすらと盛り上がる筋肉。もう何年も日には焼いていないんだろう、白い肌が目の前に広がると、オレは手の平を乗せてみた。手の平で滑らかな肌を確かめるように撫でると、そこにもキスを落とす。チュッ、というリップ音が規則正しく刻まれて、それに合わせて拓海の背中の筋肉も波打つ。拓海の横に身体を滑りこま...

『君と まわり道』 55

 今夜の拓海は、ノンケのくせにあっさりとオレの唇を受け入れ、舌を絡めても無抵抗でされるがままになっていた。あんなビール一杯で酔ってしまったのか.........それでも、電気の点いていない暗い玄関先で交わす口づけは、十分すぎる程身震いして酔いそうだった。.........はぁ、..................ん..............ん................オレの舌が唇から顎へと伝うと、拓海は首を仰け反らせて喉仏を突き出した。それをオレの唇がゆ...

『君と まわり道』 54

 運ばれてきたスペアリブに食いつきながら、無言で顔を見合うオレたち。ビールで脂を流し込むと、拓海がオレの顔を見て言った。「昨夜さ、鴨川のトコにあるバーに連れて行かれたんだ。」オレは、昨夜の電話を思い出した。鴨川のナントカって店の近く.........。結局店の名前は出て来ないが、「へえ、」と聞き流す。「取引先に4つ上の人がいてさ、その人に連れて行かれたんだけど、京都の女の子ってなんか癒される。あの言葉使いか...

『君と まわり道』 53

 スラックスのポケットの中でスマフォが振動して、オレは手に取ると画面を見て相手を確かめ通話にタップした。「は~い、今どこ?」一応、辺りを確かめながら聞く。声の主は拓海で、約束の時間から10分が過ぎていた。「悪りぃ、会社に寄ったら色々捕まって.........、今から出るとこ。あと10分待って。あ、それか先に行ってるか?!」拓海が焦る様子で話すけど、これ以上ここに立っているのもイヤだし.....。「先に行ってていいん...

『君と まわり道』 52

 朝だというのに、店に着くなり帰ることを考えてウキウキしてしまうオレ。6時半に拓海と待ち合わせ。アイツが京都から戻って来るから、一緒に夕飯を食べようという事になった。何処の店に行くかは分からないが、一緒に並んでおかしくないように、今日のファッションはスモークピンクのオープンカラーシャツに黒の8分丈のスラックスを合わせる。コインローファーを履いてシックにキメれば、拓海と歩いていても違和感はないだろう。...